資料1−2−1

 

平成20年9月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成21年度税制改正要望

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社団法人 日本船主協会

 

 

 

 


 

外航海運企業は、世界単一の海運市場において熾烈な国際競争にさらされています。主要海運国で導入されてきたトン数標準税制については、関係方面のご理解が得られ、昨年12月の平成20年度与党税制改正大綱において、わが国外航海運においても日本籍船を対象とした「トン数標準税制」の創設が認められ、同制度の根拠となる海上運送法および租税特別措置法の改正法が530日に成立、717日に施行されました。

これによりわが国外航海運の国際競争力が改善されることを期待すると同時に今後、多くの船社が採用できるよう同制度の運用面等についても使いやすい制度としていくことが必要です。

また、わが国の償却制度は、主要海運国の償却制度と比較しても大きく見劣りしたものとなっています。欧州主要海運国では、わが国の海運会社が特別償却を利用するより早期に費用化が可能となっています。諸外国の海運企業と互角の国際競争力をつけるとともに、環境に配慮した船舶を整備していく上でも船舶特別償却制度の存続は是非とも必要です。

 

また、内航海運企業は、これまで経営基盤強化、構造改善を推進しておりますが、運航コストの中で大きな割合を占める燃料油価格の高騰などから、依然として厳しい経営環境にあり、このままでは安定的な輸送も困難になりかねない状況下にあります。

わが国経済・国民生活を支える産業基礎物資の約8割を輸送(トンキロベース)する国内物流の大動脈として、また国策でもあるモーダルシフトの担い手としての役割を果たしていくためには、内航船の代替建造を安定的に進めるための各種税制面での措置が強く求められます。

 

上記に鑑み、平成21年度税制改正要望に関し、次の通り要望いたしますので、その実現につき特段のご高配をお願い申し上げます。

 

 

平成20年9月

日本船主協会

 

 

海運関係事項

 

1.船舶の特別償却制度の延長・恒久化

船舶の特別償却制度(償却率:外航環境低負荷船18100、内航環境低負荷船16100)は、平成213月末をもって適用期限が到来するが、本制度を延長すること。また、内航環境低負荷船のうち、特に省エネ・CO2削減に資する船舶については、特別償却率を18/100に引き上げること。

わが国の船舶償却制度は、主要海運国の恒久的な償却制度と比較しても大きく見劣りしたものとなっているが、わが国外航海運企業が世界単一市場の中で諸外国の船社と互角の国際競争を行っていくため、また、内航海運・旅客船会社の経営基盤を強化するために、せめて現状の特別償却制度は維持する必要がある。

さらに、船舶の特別償却制度は50年以上にわたり利用され続けており、有用性が充分検証されているにもかかわらず、2年間の延長を繰り返す期限付き措置という不安定な状態に置かれている。かかる実態に鑑み、船舶の特別償却については今回の延長に併せ恒久的な税制とすべきである。

 

2.スーパー中枢港湾の特定国際コンテナ埠頭において整備される荷さばき施設等に対する固定資産税・都市計画税の特例措置の延長

スーパー中枢港湾の特定国際コンテナ埠頭において民間ターミナルオペレーターが整備する荷さばき施設等(管理棟ならびに荷役機械等)に対する固定資産税・都市計画税の特例措置(課税標準12)は、平成213月末をもって期限が到来するが、国際的に見てわが国港湾のコスト高が指摘されているなかで、本措置が廃止され、特定国際コンテナ埠頭利用者に負担が転嫁されることとなれば、物流コスト増をもたらすことになる。公共性の高いコンテナ物流サービスの安定供給を維持するために本軽減措置を延長すること。


 

3.とん税、特別とん税の廃止または軽減

外航船舶はとん税、特別とん税の他、船舶固定資産税、入港料等を重複して負担している。入港による応益負担は当然のことであるが、これらの公租公課は諸外国に類例のない重複賦課である。港湾の国際競争力強化および物流コストの軽減の観点から、本税の廃止または軽減を求める。

 

4.内航燃料油に係る特例の創設

内航海運業は国内太宗貨物(主要産業基礎資材)の8割以上のシェア(輸送トン数ベース)を占めるなど、産業活動の円滑化ばかりか国民生活の安定に大きく寄与している。さらに、わが国は京都議定書で約された温室効果ガスの一つであるCO2の削減など環境負荷低減の見地から現在、国を挙げてモーダルシフトを促進している。これらを円滑に進めるためには、内航燃料油について、石油税の実質非課税措置(還付制度)の導入が是非とも必要である。

 

5.内航船に係る代替建造促進策としての税制措置の創設

内航船の代替建造停滞にともなう深刻な事態の発生を未然に防止する施策として、適切な規模の船舶の代替建造を中長期的に、計画的・安定的に進めるための税制上の措置を求める。

 

6.船員の支払給与に係る法人事業税の課税標準の特例措置の創設

外形標準課税に係る付加価値割の課税標準の算定に当たり、船舶の乗組員に対して支出される報酬給与額を算定方法から控除すること。


国際課税

 

1.タックスヘイブン対策税制の見直し

(1)特定外国子会社につき、留保所得のある子会社のみならず欠損金のある子会社も合算の対象とすること

現在のタックスヘイブン対策税制は欠損金の合算が認められず、留保所得のある子会社のみ日本において課税するという著しく公正さを欠いた税制となっている。法人税法第11条に規定されている実質課税の原則から、実質上親会社と一体である特定外国子会社については、欠損金のある子会社も合算の対象とすること。

 

(2)欠損金繰越期限を撤廃すること

現在の制度では過去7年間の欠損金に限り、当期の所得計算上当該欠損金を損金算入できるが、長期欠損法人の税制上の救済措置として繰越期間を撤廃すること。

 

(3)軽課税国の判定基準の引下げ

軽課税国の判定基準を、国内の法人実効税率が40%に引き下げられたこと、および諸外国の法人実効税率が引き下げられる傾向にあること等を勘案し、15%以下に引き下げること。

 

(4)課税済留保金額の損金算入制限を撤廃すること

現在の税制では配当支払の10事業年度前までの課税済留保金額しか損金算入が認められず、また、損金算入自体も孫会社の支払配当までしか認められていない。10年間の損金算入制限を撤廃し、曾孫会社が二重課税にならないよう孫会社までの制限を撤廃すること。

 

 

(5)控除未済課税済配当の控除(間接受領配当の調整)期間制限を撤廃すること

孫会社から子会社へ配当がある場合、その配当支払日から2年以内に子会社が親会社に配当を行わなければ、孫会社の配当は孫会社の課税対象留保金額から控除されず、二重課税となる。二重課税の排除の観点から、2年間の控除期間制限を撤廃すること。

 

(6)適用除外の非適用業種から「船舶の貸付」を外すこと

現在の制度では、たとえ実態のある会社でも、業種が「船舶の貸付」であれば、軽課税国に存在するだけで特定外国子会社と見なされてしまう。実体のある海外子会社であれば、タックスヘイブン対策税制対象外とすること。

 

(7)移転価格税制上定義されている国外関連者から、タックスヘイブン対策税制が適用される特定外国子会社を除外する

移転価格税制上、国内の法人と国外関連者(法人)間との取引価格を通常価格に引き直すため、第三者取引価格の算出が必要とされるが、特定外国子会社は合算課税の対象となっているため、所得の移転とはならず、課税上の弊害はない。従って、移転価格税制上定義されている国外関連者の対象範囲から、タックスヘイブン対策税制が適用される特定外国子会社を除外すること。

 

2.外国税額控除制度の見直し

(1)一括限度方式の堅持

国際的二重課税の排除方式として外国税額控除を採用しているわが国においては、企業のグローバル化・複雑化に対処するため、また課税ベース、課税及び控除のタイミングを判断する際に、各国の制度の相違が存在する以上、それらのミスマッチを緩和するためには、一括限度方式の維持が不可欠である。

 

 

 

(2)控除限度超過額の損金算入制度の創設

@控除限度超過となった外国法人税は繰越か損金算入の選択を認めること

A繰越期間内に控除できず、控除不能が確定した繰越外国法人税は損金算入を

認めること

 

現在の制度では、外国にて支払った税額の控除限度超過額が恒常的に発生しているが、控除限度額を超過のために控除できない外国税額は損金にも算入できないため、海運会社の海外展開に関わるコストの増加、国際競争力の低下を招いている。国際的二重課税の排除の観点から、上記の損金算入制度が必要である。

 

(3)控除限度超過額および控除余裕額の繰越期間を廃止すること

外航海運業では多額の外国税を恒常的に納めており、所得の発生時期と租税の納付時期の差等により、控除されるべきわが国法人税と対応関係にないことから3年間の期限では控除しきれない場合が多い。国際的二重課税の排除の観点から、控除限度超過額および控除余裕額の繰越期間制限の撤廃が必要である。

 

(4)間接外国税額控除制度の拡大

@間接税額控除の持ち株比率の制限を現行の「25%以上」から、欧米先進国

並みの「10%以上」とすること

間接外国税額控除の持株所有要件は、現行の制度では25%以上となっているが、多くの先進国では10%以上となっている。国際的二重課税の排除の観点から、他の先進国に比べて厳しすぎる現行制度を緩和することが必要である。

 

A間接外国税額控除の対象範囲を孫会社から、曾孫会社まで拡大すること

現行の間接外国税額控除は孫会社までしか認められていない。国際的二重課税の排除の観点から、間接外国税額控除の対象範囲を曾孫会社まで拡大すること。

 

 

(5)みなし外国税額控除制度の維持

近年、みなし外国税額控除制度の縮減・廃止の方針が打ち出されているが、日本企業が、みなし外国税額控除制度を認めている国との国際競争力の面で劣後するような事態は避けるべきである。

 

(6)地方税から控除未済となった金額の還付制度の創設

@地方税から控除未済となった金額は、法人税と同様に還付すること

A還付が認められない場合は、少なくとも損金算入を認めること

控除対象外国法人税額が多いため、地方税の過年度の控除余裕額を利用する場合に、当期の地方税の法人税割の金額を超えることがあるが、現行制度では、当該控除未済の金額が還付されず、将来3年間控除未済額として繰越される。地方税においても、国税と同様控除未済となった金額については還付制度の導入が是非とも必要である。


企業税制

 

1.法人税の実効税率の引き下げ

わが国の法人税率は依然として欧州・アジア各国の水準と乖離しており、企業の競争力を削ぐ要因となっていることから、法人所得課税の実効税率を現状よりも引き下げていくことが必要である。

 

2.連結納税制度の改善

(1)グループ内の寄付金の容認

連結納税グループ会社間の寄付金は全額が損金不算入となる。同一法人の事業部門間では問題とならない取引が、子会社化し連結納税制度を選択することで異なる取扱いを受けることは、連結納税グループを単一法人とみなして課税する連結納税の考え方と矛盾するため、グループ内の寄付金は全額損金算入を認めること。

 

(2)小規模子会社の交際費損金算入

連結納税においても小規模子会社の交際費損金算入を認めること。

 

(3)連結納税子会社の連結納税適用以前の欠損金の当該子会社所得との相殺

現行の連結納税制度では、連結納税適用以前の子会社欠損金は、適用時にすべて翌期以降への繰越が不可能であり、連結納税制度適用の最大の障壁となって円滑な組織再編に結びつかない。

 

 

 

 

(4)連結対象に特定外国子会社(100%)も認める

便宜置籍船会社のように租税回避目的ではない100%支配の特定外国子会社については、外国法人とはいえ親会社と経済的一体が認められるので、課税対象となる連結グループ全体の所得に加えられるべきものであり、連結納税の範囲を拡張することにより、内国法人の企業活動の活性化に資することができる。

 

3.償却資産に係る固定資産税の廃止

船舶などの償却資産に対する保有課税は収益課税との二重課税であり、課税の根拠が不明確である。国際的にみても償却資産に対する課税は極めて異例であり、わが国海運の国際競争力を阻害するものとなっている。

課税が海運業や特定の設備産業に偏重し、課税の中立性にも問題があることから償却資産に対する課税の廃止を求める。

 

4.新たな税負担となる環境税の導入に反対

物流コストの低減に努めている外航および内航海運にとって、環境税の導入による新たな税負担は大きな打撃を受ける。

特に内航海運は、わが国の基幹的な輸送機関であり、環境負荷が小さくモーダルシフトの牽引車としての役割や、静脈物流の担い手としても期待され、運輸産業全体で懸命に取り組んでいる。こうしたなかで新しい税制が導入された場合には、大きなコストアップ要因となり、モーダルシフトの目標値達成は困難となる等、結果としてCO2排出量総量の削減にはつながらない可能性が大きい。

 

5.欠損金の繰越期間制限の撤廃

日本の税法では、過去7年間の損失に限り、当初の所得計算上損金算入できるが、長期欠損法人の税制上の救済措置として繰越期間の撤廃が必要である。先進国の例では、米国では20年間の繰越、英国に至っては永久に繰越が認められている。

 

6.欠損金の繰戻還付不適用措置の廃止

法人税法では前事業年度の利益に対して当期の欠損金の繰り戻しを行い、還付を受けることが認められているが、租特法により平成4年以降不適用措置が継続されている。欠損法人の救済措置として不適用措置の廃止が必要である。

 

 

7.受取配当金の益金不算入制度の改善

(1)特定利子規定の復活

平成14年度税制改正において、受取配当金の益金不算入制度から特定利子規定が廃止されたことにより、運転資金の借入および設備資金の長期借入が多い会社では、受取配当金の大部分が二重課税となってしまう。当該制度は連結納税制度導入による税収減の補完として平成14年度税制改正にて廃止されたが、論拠のない増税策であり、受容できない。

 

(2)特定株式以外の株式等に係る受取配当の益金不算入割合の引上げ

既に課税済みである株式の受取配当に対する課税は二重課税であり、現行の益金不算入割合(50%)を引き上げる(もしくは全額益金不算入とする)ことが必要である。当該制度は連結納税制度導入による税収減の補完として平成14年度税制改正にて変更(従来は益金不算入割合が80%)されたが、(1と同様、論拠のない増税策であり受容できるものではない。

 

8.退職給与引当金制度の復活

退職給与引当金は、連結納税制度導入による税収減の補完として平成14年度税制改正にて廃止されたが、当該制度は固定費の平準化に欠かすことのできないものであり、復活させることが必要である。

 

9.税務上の取扱いに係る申告前の事前確認制度の導入

納税者の権利保護の明確化に資するため、事前確認制度を導入すること。

 

10.交際費の損金算入

企業の積極的な活動を支援するため、営業活動を行うにあたって必要と認められる一定の支出に関し、損金算入は認められるべきである。

 

11.減価償却費、各種引当金・準備金、圧縮記帳積立金等の各種

項目における税法での損金経理・利益処分経理要件の撤廃

会計と税務が分離していく流れの中で、会計で処理したものしか認められないとする損金経理要件・利益処分経理要件は不合理であり、撤廃すべきである。

 

以 上