【資料3-4-2-2

 

了解事項

アジア船主フォーラム(ASF)

シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC

21回中間会合(東京)にて採択

        

 

 

アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)第21回中間会合は、ASFメンバーであるアセアン、中国、台湾、香港、日本、韓国の各船主協会から22名の代表が出席し、20081210日に東京で開催された。出席者名簿は添付の通り。

 

1. 世界経済

会合は、米国のサブプライム・ローン問題を契機とする経済危機が、より一層急速かつ破壊的に世界中に波及したことに留意するとともに、先月、G-20およびAPEC首脳が世界経済の回復に向け引き続き緊急かつ異例の対策を講じるとの決意を表明したことを歓迎した。一方出席者は、危機は自らのビジネス・モデルを包括的に見直す好機になり得ることを念頭に、この危機の根本的な意味合いを冷静に熟考するよう求められた。

 

2. ドライバルク/タンカー部門

1) ドライバルク市況は、20086月末までは好調に推移したが、その後、中国の鉄鉱石輸入の減速、積出港での船混み緩和および市場からの投機資金の流出等の要因により下落した。困難な経済環境とは対照的に、2010年に大量の新造船竣工が集中する可能性があるという懸念は、信用収縮により一部の船主および造船所が新造船のための資金調達難に陥っていることから、相当程度軽減されたものと思われる。これまでの動向を踏まえると、新造船の解約件数は1,000隻に到達する可能性がある。また、この市況低迷は老齢船の解撤を促進するものと思われる。現在の金融危機が2009年後半には底となり得ることを期待し、ドライバルク市況が2010年以降持ち直すことが有りうることに留意した。

 

2)タンカー部門については、VLCCが、20089月末までは概ね高水準だったが、その後、主に中国と米国の石油輸入の減少傾向により下落したことが報告された。また、2009年の見込みも低調とされたが、足元の市況は、冬場の需要期を迎え多少の上昇傾向を示しているようであることが認識された。これに関連し、信用収縮による新造活動への押し下げ圧力、鋼材価格の下落、シングルハルタンカーのフェーズアウト、バイオ燃料など非在来型エネルギー資源への追加需要、ならびに、石油生産国が西方から東方へ広がる動きや石油精製地点の消費国から原産国(特に中東)へのシフトなどが、将来のタンカー市況に前向きの影響を及ぼす可能性がある。

 

3. 定期船部門

1) 太平洋トレードについては、20081月〜8月の北米向け荷動きは、米国の住宅市場と個人消費の不振により、前年同期比7%減の950TEUであったことが報告された。2009年の見通しも、余り前向きではないが、オバマ新政権により大規模な景気対策が実施されることを期待し、2009年後半には反発の兆しが見られる可能性があるとの見解も示された。他方、上記期間の北米発アジア向け西航荷動き量は、古紙および鉄屑等の貨物量の増加、ならびにドライバルク市況の活況による従来のばら積み貨物、例えば穀物など、のコンテナ船へのシフトの影響で前年同期比18%増の430TEUとなった。しかしながら、経済混乱の結果、貨物の伸びは鈍化している。相当数の未使用船舶スペースがあり、また、将来が不透明という状況の中、多くの船社が、例えば、減速航行、返船、係船、ならびに冬季プログラムの前倒しなど様々な方策による経営の合理化を開始している。

 

2) アジア域内航路に関しては、2008年については依然としてある程度の堅調な貿易増が見られるが、成長率は世界経済のかつてない急速な収縮により2007年を大きく割り込むことが報告された。同航路は、太平洋航路に比べ弾性があると思われるが、コンテナ船のカスケード効果に耐性の弱い航路であり、それ故、2009年とそれ以降の需給状況について慎重なアプローチが適当ということになった。

 

3) 現在の経済減速に加え、船社は、上記の両航路において、増大するコスト要因という重荷を引き続き背負っている。バンカー価格は、船社がかろうじてレギュラーサービスを維持できる水準にまで下落してきたが、鉄道・トラック輸送およびその他ターミナル関連コスト、特に内陸燃料費、は高止まりしている。これに関し出席者は、アジア船社のCEOは、これらのコスト要因を慎重に検証するとともに、顧客に対し船社が直面している実際の困難な状況について十分に知らせるべく最大限の努力を払うことが重要であると合意した。また、経済危機の“TSUNAMI”の衝撃的な影響が、国際海運業界に明らかに及んでいることも合意された。将来の海運市場が如何にこの不況を吸収するかを正確に予測することは極めて困難であるが、上記CEOは、太平洋およびアジア域内航路の現状に対し、長期的な総合戦略に基づいて確信をもって経営決定を行い、合理的かつ忍耐強く対処することを要請された。

 

4. 定期船海運業に対する独禁法適用除外制度

中国、香港、インドおよびEUにおいて、最近、競争法問題に関する動きがあったことが報告された。出席者は、独禁法適用除外制度が健全な海運業界にとって不可欠であるというASFの長年の立場を再確認した。また、欧州委員会が200810月にコンソーシア規則案を公表するとともに、ASFメンバーである一部の船主協会(注:日本・韓国・シンガポール)が、持続可能な世界貿易を支え、市場や顧客の要請の変化に柔軟に対応するためには、コンソーシアムに対する広範で柔軟な包括適用除外規則が重要である、ことを主張するコメントをECに提出したことが報告された。SERC出席者は、EU競争法の枠組み内で現行コンソーシア制度を確実なものとするための法的確実性を長期に亘って維持する必要性を認識し、コンソーシア制度の利点と役割に対する更なる理解を深めるために引き続き関係者と連携していくべきであることが合意された。

 

5.その他

1)海賊問題について、本会合は、国連安全保障理事会が、国連加盟国や地域機関が、関連する国際法に従って海賊や武装強盗に戦うためソマリア領海に入り、軍艦や軍用機を展開するなど必要な全ての手段を使用できることを規定した20086月の決議の有効期間を、更に12ヶ月延長することを最近決定したことに留意した。本会合はまた、IMOと全ての海事国家に対し、海賊と戦う政治的意志の行使を求めた、ASF SNECによる2008915日付のアピールに留意した。SERCは、世界貿易を脅かす絶え間ない極度の危険性と商船による限界ある自己防衛手段を考慮し、国際社会に対し、海賊に対する更なる断固とした対抗手段が可能な限り多くの政府によって即時実施されることを強く要請するものである。

 

2)中国における貨物情報の24時間前提出規則が200911日が施行されると公表されたことが留意された。しかしながら、同規則を施行するための補完的な規則が未だ発表されていない。発効日まで時間が短いことを考慮し、中国を発着する貨物の円滑な輸送を確保するため、関係当局は詳細な情報を公表するよう求める。

 

3)出席者はまた、WTO交渉や、200811月に日本で開催されたコンテナ・シッピング・フォーラムなど最近の事項についても意見交換を行なった。

 

 

 

 

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アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)は、アジアの船社首脳が海運に関連するマクロ経済的な貿易情報やその動向を検討する場である。SERCの目的は、入手可能な経済データを考察し、主要貿易問題の展望を共有することにより、経営意思決定の質を高めることである。

 

 

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*本件に関する問い合せ先:

日本船主協会 企画部 本澤/笠原(Tel03-3264-7180