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海運雑学ゼミナール
023 ちょっと待て! 船はすぐには止まれない
 アッ、目の前に急に人が! とっさの急ブレーキで間一髪セーフ。車ならこれでいいが船の場合はそうはいかない。30万重量トンの大型タンカー(VLCC)が、原油を満載し16ノットのフルスピードで走っている状態で急にエンジンを停止しても、船がほぼ静止するまでには約30分かかり、この間に船は8キロメートルも進んでいる。
 フルスピードから全速後進をかけても停止までに15分、距離にして3キロメートルほど進んでしまう。しかもエンジンを止めたり逆転した場合、船は舵の効果をほとんど失い、右に曲がるか左に曲がるかまったくわからない状態になる。
 こうした理由から船が緊急事態を回避するためには、ブレーキをかけるよりもエンジンはそのままで舵を左右いずれかに切る方が有効ということになる。しかし船は車のように急ハンドルが切れるわけではない。満船状態のVLCCが舵をいっぱいに取っても、その回転弧は直径1キロメートル。しかも舵が効きはじめるまでにある程度のタイムラグがある。車のように衝突直前、一瞬のハンドルさばきで事故を回避というわけにはいかない。
 VLCCに限らず大型船の操縦にはこの動きののろさを計算に入れ常に先を読んで行動する必要がある。車や飛行機の操縦とは別の、巨大さゆえの難しさがあるというわけだ。
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