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海運雑学ゼミナール
053 「アルキメデスの原理」で計るばら積み船の積荷の重さ
 「液体中に浮かぶ物体は、その物体が排除した液体の重さ分の浮力を受ける」。ご存じアルキメデスの原理だ。これを海上に浮かんでいる船に当てはめれば、船体の海中に没している部分の容積に相当する海水の重さは、船自体の重さと等しいということになる。鉱石船などばら積船の積荷量は、この原理を応用した「ドラフトサーベイ」という方法で計測される。
 ドラフトとは喫水のこと。つまり空荷の状態と積荷の状態の喫水の差を調べることで、貨物の重さによって排除された海水の容積を割りだし、運賃算定や商取引の基準となる積荷の重量を計算するわけだ。
 20万重量トン前後にも達する巨大な貨物船の積荷量を、喫水の変化だけで計るというと、いかにも「どんぶり勘定」といった印象を受ける。しかしこのドラフトサーベイ、単純なようでじつは複雑な要素が絡み合っており、通常、荷主側、船主側の立ち会いのもとに専門的な技術を持つサーベイヤーが行う。
 例えば喫水の読み取り。波やうねりのある場所では、水面の上下動による一定時間の平均値を取る必要がある。潮流の激しい場所では、停泊中に船首の水位が上昇することも考慮に入れなければならない。
 海水の比重も港によって異なる。とくに河口にバースがあるような港では、船首と船尾、水深の深さ等により複雑に比重が変化する場合もあり、やはり決められた数ヶ所の平均値を取る。さらにバラストや清水、燃料、船用品、食料などの重量もできるだけ正確に計る。
 こうした計測が、積荷前と揚荷前の2度にわたり行われ、そのデータをもとに、海水比重の差を考慮しながら排水量の変化を計算。さらにバラストや燃料など貨物以外の積載物の変動分を差し引くという複雑な手順を経て、最後に正確な積荷量が割りだされる。
 小中学生の理科の実験にも登場するアルキメデスの原理。しかし現実の応用となると、裸で浴槽に浸かったアルキメデスのようには簡単にいかないようだ。
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