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海運雑学ゼミナール
095  「海難審判庁」は、海の事故専門の裁判所
 多数の痛ましい犠牲者を出した海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と民間の釣り船の衝突事故が1988年に発生した。その原因究明の過程で、「海難審判」という一般の人には耳慣れない言葉が、しばしばマスコミに登場した。
 陸上での交通事故なら、原因や責任の究明は裁判所で行われるが、海難の場合、海難審判法に基づく海難審判が、その原因究明の場となる。担当するのは国土交通省管轄の海難審判庁。全国7ヶ所におかれた地方海難審判庁と、高等海難審判庁の二審制をとっている。
 海難審判は、理事官(通常の裁判の検事に相当)の審判開始の申し立てによって開始され、受審人(海技従事者)または指定海難関係人(海技従事者以外の者で海難の原因に関係あるもの)が審判の当事者(被告人に相当)となる。またその弁護を担当する海事補佐人(弁護士に相当)も選任される。
 裁決は、審判長(裁判長に相当)によって言い渡され、原因が海技従事者、水先人にある場合は、免許取消、業務停止、戒告等の懲戒、それ以外の者に対しては勧告が行われる。
 もし第一審の地方海難審判庁の裁決に不服があれば、高等海難審判庁に第二審の請求ができる。さらに不服がある場合は、東京高等裁判所へ提訴でき、高等裁判所の判決に対しては、最高裁判所への上告も可能だ。
 ただし刑事責任の追及や損害賠償問題等は、通常の裁判で解決されるのが原則で、海難審判ではこうした問題には関与しない。しかし実際に裁判ないし示談に持ち込む場合、海技について専門的な知識を持つ海難審判庁の裁決内容が、重要な参考材料になることはいうまでもない。
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