日本船主協会

トップページ海運雑学ゼミナール

海運雑学ゼミナール
105 スパイス欲しさで始まった大航海時代
 中世の欧州では、家畜の肉が重要なたんぱく源。草が枯れて放牧ができなくなる冬には大半の家畜を殺してその肉を塩で漬け保存食とした。しかしただ塩漬けしただけの肉のにおいはあまりにも強烈。これを何とかごまかすには、香辛料(スパイス)の助けを借りるほかなかった。
 ところが東洋特産の香辛料は、当時はきわめて高価だった。欧州へ届けられるまでに何人もの商人の手から手へと渡るため、どんどん値段が上がり、欧州の市場に出るころには等量の銀と同じ値段になってしまう。16世紀の英国では、コショウが1粒単位で売買されたほどで、ロンドンの波止場では、倉庫の番人がコショウをくすねることのないように、衣服のポケットはすべて縫いつけさせていたという。
 そこで、海路により、産地直送の香辛料を安く大量に入手することが、当時の欧州の人々にとっての悲願となった。その切実な思いが、大航海時代の発端になったといっても過言ではない。コロンブスが、新大陸をインドと誤解したのも、当時のインドが香辛料の宝庫とみなされていたためだ。
 しかし間違えて到着したはずの新大陸からもたらされた新しい栽培植物は、欧州の人々の食生活を一変させた。保存性の高いジャガイモやトウモロコシは、当時度々襲ってきた小麦などの不作による飢餓から人々を救い、トウガラシやトマトは単調だった欧州の料理に豊かな彩りを添えたのである。
前のページへ海運雑学ゼミナールタイトル一覧へ次のページへ