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海運雑学ゼミナール

119 パナマ運河:
動力なしで船を26m持ちあげる巧妙な“水の階段”

 パナマ運河は、海抜約26mの人造湖であるガツン湖を頂点に、太平洋側、大西洋側を、それぞれ4ヶ所のロック(閘門)で仕切られた"水の階段"でつなぐ、全長93kmの閘門式運河だ。
 閘門式運河とは、前後をロックで仕切られた水路の水位を上下させ、次の水路の水位と一致したところで水門を開け船を前進させる、ということを繰り返して、船を"山越えさせる"運河の方式だが、水路の水位を変えるために動力によるポンプなどは一切使っていない点がパナマ運河の特徴でもある。
 その原理を説明するとこうなる。ロックとロックに挟まれた水路を、便宜上「水槽」と呼ぶ。下りの場合、まず最上部の水槽に、運河の頂上にあるガツン湖の水を流しこむ。すると水槽の水位はガツン湖と同じになる。ここでロックを開け、船がガツン湖から水槽内に入ったところでロックを閉める。今度は、いま船がいる水槽の水を、やはりロックで仕切られた次の水槽に落としてゆき、二つの水槽の水位が一致したところで、ロックを開け船を通す。あとは同じことの繰り返し。上りの場合も船の進行方向が逆になるだけだ。
 つまり、ここではガツン湖の湖水の重力だけですべてが行われているのである。ガツン湖から階段上に落ちてきた水は最後には海に流れてしまうが、ガツン湖には、周囲の山々から絶えず新しい水が供給され、水位は常に一定に保たれる。流出する水量と補給される水量のバランスを考えつくした、じつに巧妙な設計だ。
 この素晴らしい水の階段を通って、今日も米国南部の港から日本へ、膨大な小麦やトウモロコシが運ばれてきている。
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