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海運雑学ゼミナール
125 形状さまざま、客船の化粧煙突
 現代の船の種類は多種多様だ。しかしブリッジやマスト、船首の形状など、個々の部分をみれば、その基本的な形はどの船もそう違わない。そんな中で、最も個性的で装飾的といえる部分が客船の煙突だろう。
 石炭焚きからディーゼルエンジンの時代になって、船の煙突から吐き出される煙の量は極端に少なくなり、実際に排煙の機能を持つ部分は、ごく細いパイプでこと足りるようになった。このため、現在では、一般に煙突と呼ばれている部分(所属船社を示すファンネルマークが描かれている部分)は、厳密には煙突ではなく「煙突の囲い」にすぎない。これは、一般に化粧煙突と呼ばれる。  機能としてはなくてもよい煙突が、どの船にもついているのは、船としての美観上のバランスを保つという、もっぱらデザイン上の理由だが、こうした船の煙突のあり方を、さらに装飾的な方向に発展させたのが客船だ。
 もちろん実用的な側面がないわけではない。客船の場合、デッキやプールで日光浴する乗客もいる。いくら煙が少ないとはいえ、その頭の上に煤煙が落ちてきては困る。そこでできるだけデッキに煤煙が落ちない構造が求められる。客船が化粧煙突のデザインにこだわる第一の理由がこれだ。
 さらに洗練された美しい外観は、客船の大きな魅力の一つ。その中でも煙突の形状は、きわめて大きな比重を占める。こうした理由から、客船は、次第に化粧煙突の優美さや個性を競うようになる。
 排気口を翼のように左右に張り出させたもの、いくつもの排気管をパイプオルガンのように並べたもの、煙突の中段に展望台やプロムナードデッキを設けたものなど、その形状はさまざま。船全体のプロポーションとも見事にマッチした美しい化粧煙突は、かつての船首像に匹敵する、現代の客船のユニークなシンボルとなっている。
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