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海運雑学ゼミナール
152 懐中時計や腕時計の原型となったクロノメーター
 航海中の船は、緯度と経度から自分のいる位置を知るが、コロンブスをはじめとする大航海時代の船乗りたちにとって、緯度を知ることはさほど困難ではなかった。ごく簡単な計測器で、正午の太陽の高さ(角距離)を測定すれば、そこから簡単に緯度を割り出せたからである。
 問題は経度だった。正確に経度を割り出すための方法は二つあった。ひとつは月の運行を正確に観測し、そこから複雑な計算によって導きだす方法と、クロノメーターと呼ばれる正確な航海時計を作り、あらかじめセットされた標準時と天測による地方時との時差によって経度を知る方法だった。
 しかし最初の方法を普及させることはきわめて困難だった。教育のない水夫たちに難しい数学を教え込むことはまず不可能に近かった。そこで英国政府は懸賞金を出して発明家たちにクロノメーターの開発を促した。
 当時、振り子式の時計はすでにあったが、絶えず揺れつづける船の上で使えるものではなかった。そこで考えられたのがゼンマイ式の時計で、政府の出した基準を満たすクロノメーターの製作に成功し1万ポンドの賞金を手に入れたのは、ヨークシャーの大工の息子・ジョン・ハリソンだった。
 こうしてできたクロノメーターが航海用の時計として普及する一方で、それを原型とする小型の時計が一般大衆の間にも急速に普及し始めた。持ち運び可能なゼンマイ式船舶時計の技術は、そのまま大衆用の携帯時計の技術でもあったわけだ。
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