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海運雑学ゼミナール
161 深海調査船:宇宙旅行より難しい海底旅行
 アポロやボイジャー、スペースシャトルなどの華々しい成果によって宇宙についての知識は増える一方だが、こと深海底のこととなると私たちの知識はまだまだ貧弱だ。
 日本が誇る「しんかい6500」の活躍が最近しばしば報道されるが、こうした探査による深海生物や熱水鉱床の発見への驚きは、逆に、距離的には宇宙よりはるかに近い海について、私たちがあまりにも無知だったことの証明ともいえる。
 とはいえ学者や研究者がこれまで海底のことをなおざりにしてきたわけではない。そこには宇宙にはない困難な障害がいくつもあったからだ。
 例えば、宇宙では電波が自由に利用できるが、海中では長波のごく一部しか使えず、どうしても音波に頼ることになる。しかし音波は電波と比べて到達距離も情報の解像度もはるかに劣る。
 エネルギーの問題もある。宇宙では有力なエネルギー源となる太陽電池も、太陽光の届かない深海では使えない。母船から電力を供給するには長大なケーブルが必要で、もし切れた場合には一大事となる。バッテリーにしても低水温の深海底で長期間安定して使えるものの開発は困難だ。
 もっと大きいのは圧力の問題だ。地表と宇宙空間の気圧差はわずか1気圧。しかし数千メートルの深海底では数百気圧にも達する。1気圧の差なら宇宙服だけでも十分だが、深海底で有人探査をおこなうためには非常に丈夫な耐圧容器が必要で、その開発には極めて高度な技術が要求される。
 私たちはまるで水族館の魚を見るように「しんかい6500」が撮影した不思議な深海魚の映像を見ることができるが、その映像と私たちの間には、数千メートルの厚さの水の壁を越える膨大なテクノロジーの集積がある。
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