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海運雑学ゼミナール
162 国際情報化時代だった大航海時代
 ヨーロッパとアジアや新大陸が海の道で結ばれ、世界が一つになった大航海時代は、現代に優るとも劣らぬ国際情報化時代でもあった。
 例えば、ペルーのイエズス会宣教師が、インディオの呪術師と日本の山伏を比較して論じたり、日本のドミニコ会の修道士が、メキシコの司教の布教方法を批判したりということが、当時は普通に行われていた。
 日本にやってきた宣教師ルイス・フロイスの「日本覚書」の一部が、彼の死後間もなくフィレンツェ出身の貿易商カルレッティの「世界一周記」の一部に引用(盗用)され、ヨーロッパの知識人の注目を集めたこともあった。また1605年に出版された「ドン・キホーテ」は、その年のうちにメキシコやペルーでもベストセラーとなっていた。
 日本でも、織田信長や豊臣秀吉は、地球儀を前に宣教師たちから世界地理について講義を受けていたし、ウィリアム・アダムスから西洋の数学を学んだ徳川家康は、コンパスや眼鏡、はさみ、時計、鉛筆など、西洋製品の愛好者でもあった。当時の日本の知識人は、欧州はおろかメキシコやペルーなど新大陸の事情にも相当通じていたらしい。
 宣教師や貿易商によって行われたこうした情報の伝播は、国際電話もファクシミリもない当時を考えれば驚くほど迅速かつ正確だった。こうした情報の流れによって世界は有機的につながり、ある地域での経済情勢の変化や政治的事件は、他の地域にも何らかの影響を及ぼすようになった。これは現代の国際社会とほとんど変りない。
 ヨーロッパにとって近代の幕開けとなった大航海時代は、その後の鎖国政策で再び世界から孤立する日本にとっても、まさに束の間の近代の開花だったといえよう。
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