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海運雑学ゼミナール
171 殿様ワッチと泥棒ワッチ
 貨物船や客船など船舶の航海中に、航海士と部員(甲板手)がペアでブリッジに立ち、船の運航状況や周囲の船舶の動きなどを監視するのが航海当直(ワッチ)だ。午前0時から4時間ごとの6つの時間帯に分けて行われ、担当航海士は甲板手1名とペアを組んで、それぞれが4時間当直して8時間休むというサイクルで当直に立つ。こうした当直時間帯は、一般に1日のうち最初の時間帯をとって「ゼロヨン」(0〜4時、12〜16時)、「ヨンパー」(4〜8時、16〜20時)、「ハチゼロ」(8〜12時、20〜24時)と呼ばれる。
 このうちゼロヨンは、通常、二等航海士が担当する時間帯で、最初の当直時間がちょうど真夜中に当たるため「泥棒ワッチ」の別名がある。体力面からもいちばん厳しい時間帯といえる。一方、ハチゼロは三等航海士が担当する時間帯で、ちょうど一般の人が起きている時間でもあり、体力的に楽なことから「殿様ワッチ」とも呼ばれる。この殿様ワッチを経験の浅い三等航海士に担当させるのは、船長や機関長が起きている時間帯で、監督するのに都合が良いためだ。
 またヨンパーは一等航海士の担当時間だが、入社したばかりの航海士はまず四等航海士として、一等航海士とともにこのヨンパー当直に立つことが多い。これは朝夕の薄明時や日出、日没を含む時間帯のため、天測や方位測定など船乗りとしての基本技術を習得させるのに最適だからだ。
 三等航海士が「殿様」で二等航海士が「泥棒」という、常識的には逆転しているようにもみえる当直時間の分担には、このように、船を安全に運航することはもちろん、各段階を追って船員の技能の向上を図る教育訓練面での知恵も隠されているわけである。
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