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海運雑学ゼミナール
182 「スリップ」で示される航行中の船の推進効率
 自動車なら、アクセルを踏めばすぐにスピードは上がる。しかし貨物船などの大型船では事情がちがう。これは、外洋航海中、通常は、主機を長時間安全に動き続けることのできるほぼ最大の回転数で動かしているためだ。
 この時の速力が航海速力で、これは設計時にあらかじめ決められ、通常、この速力で航海しているときがその船にとって最も効率の良い航行状態になる。例外は、オイルショック時などに行われた減速航海で、これは速力を犠牲にして燃料消費量を削減するいわば苦肉の策だ。
 主機の回転数が一定なら、船の実際の速力は、航海中に受ける潮流や波浪、うねり、風などの抵抗によって決まる。プロペラの1回転で進む距離をピッチといい、一定時間内のプロペラの回転数にピッチを掛ければ、その時間内に船が進む理論上の距離が算出できる。
 この距離と実際に船が進んだ距離の差をパーセントで表したものが「スリップ」で、逆流や波浪、うねり、船底に付着した貝や海藻などの抵抗で推進効率が落ちれば、スリップの数値は大きくなり、逆に追い風や順流で推進効率が高まればスリップの値は小さくなる。
 荒天などでスリップが大きい時、無理に速力を維持しようとすれば主機の回転数を上げるために燃料の噴射量を増やすことになるが、そうすると燃料消費量が増えるばかりか、排気温の上昇で排気弁をこわす危険性がある。そこで、気象条件や潮流を計算に入れ、あらかじめ最適の航路を求める出港前の航路選定は、船長の腕の見せどころとなる。
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