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海運雑学ゼミナール

196 家畜運搬船:中東・豪州間で活躍する生きた羊を運ぶ専用船

 国柄が異なれば、輸入される物資も異なる。外国には、日本ではニーズがほとんどない貨物を運ぶ珍しい(日本人からみれば)専用船もある。家畜運搬船もその一つだ。
 この船種が活躍するのは、オーストラリアなど食用羊の輸出国とその輸入国である中東諸国を結ぶ航路。イスラム教国では羊が食肉の中心だが、宗教上の理由で屠殺後24時間以内の肉しか食べられない。このため生きたまま輸入する必要があるからだ。
 家畜運搬船の外観は、自動車専用船に似ている。ほとんどが、甲板上に何層ものサブデッキをもつ構造物をつくり、そこをさらに細かく区分けして家畜の格納スペースとする。また甲板から下の船倉部分は、輸送中の飼料の貯蔵スペースや清水タンクなどに使われる。
 甲板上には、飼料サイロが設けられ、ここからペレット状の飼料がベルトコンベアなどによって家畜スペースに送られ、さらに飲み水を送る配管や、汚水を処理する配管・タンク設備も設けられている。とくに輸送中の酸素欠乏を防ぐため換気には十分な配慮がなされ、通常、毎分12回〜20回程度の換気が行われる。
 タンカーなど他の船種を改造した船が多いのも、この専用船の特徴の一つ。7万重量トン程度の比較的小型の原油タンカーを改造したもので約8万頭の羊を運ぶことができる。
 食肉の羊といっても生きた動物である。死亡率が高ければ採算が低下するだけでなく、動物虐待と非難されることになる。家畜運搬船は、おそらく、さまざまな専用船の中でも輸送中とくに神経を使う船種の一つだろう。
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