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海運雑学ゼミナール

198 ケーブル敷設船:
海藻と間違えて切り取られた世界最初の国際海底ケーブル

 最近は、通信の分野で人工衛星が盛んに使われるようになったが、やはり国際電気通信の主役は海底ケーブル。電波と比べ、周波数帯域の制限がなく、気象等による通信障害もない。距離による信号の減衰もほとんどなく、さらには第三者による通信の傍受が困難といった理由で、その優位性はまだまだ高いといえる。
 現在、海底ケーブルの主役は光ファイバーだが、かつての銅線時代に遡るとその歴史は古い。世界最初の国際海底ケーブルは、1842年にイギリスのドーバーとフランスのカレーを結んだもの。あの「トン・ツー」の信号を用いた有線電信の発明者サミュエル・モールスがエンジニアとして参加したプロジェクトだった。
 しかし、この時、通信が保たれたのはわずか数時間。なんとドーバー海峡で漁をしていたフランス人漁夫がうっかりケーブルを引き揚げてしまい、一部を切り取って持ち帰ってしまったのである。漁夫はそれを新種の海藻と思い込み、友人たちに見せびらかしていたという。しかし、翌年にはもっと丈夫な海底電線が作られ、再び敷設されて、通信は見事に成功した。
 海底ケーブルの敷設は、現在は専用のケーブル敷設船によって行われる。平均的な船で約5,000〜6,000キロメートル分のケーブルを積み込み、これを船首あるいは船尾のローラー経由で海底に繰り出す。
 トラブルがなければ、普通1日で約300キロメートルの敷設が可能で、電柱や地中を利用する陸上の電線敷設作業と比べ驚くほど効率的。経済性でも通信衛星を打ち上げるより、はるかに低コストだ。海の道は、物流のみならず情報にとっても最も経済的なルートなのである。
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