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海運雑学ゼミナール

199 往路は砂利を運んだ快速帆船ティー・クリッパー

「バラスト」とは、船体の重心を低く保つとともに喫水を適当な深さにして堪航性を高めるために積み込まれる物を指し、日本語では「底荷」と訳される。現代の船では、一般に海水を用いるが、その本来の意味からすれば、積み込むのは海水に限らない。実際に、かつては、砂利や土砂、丸太などさまざまな物資が、バラストとして用いられた。
 最もポピュラーだったのは砂利で、特に中国産の茶を英国まで運んだ快速帆船ティー・クリッパーでは、茶の香気を害さないようにバラストとしての砂利の品質にも神経を使った。
 日本でも、かつては砂利がバラストとして一般に用いられており、関西地方などで、砂利や小石のことを「バラス」と呼ぶのは、この時代の名残りといえる。英語圏でも、鉄道や道路に敷く砂利などをバラストと呼んでおり、こうした点からも、砂利が、かつてバラストとして広範に用いられていたことがうかがえる。
 しかし船舶の大型化が進むにつれ、大量の砂利を入出港のたびに積み卸しする作業は著しく非効率的なものになり、ポンプで簡単に漲排水できる海水がバラストの主流となる。
 ちなみに、現在でも、海水以外のバラストを用いる稀な例として、わが国の「しんかい6500」を始めとする深海探査艇がある。この場合、降下速度を高めるために、水よりも比重の大きい金属球や金属板をバラストとして用い、上昇時には、これを艇外に捨て、船体の比重を軽くして浮上する仕組みになっている。
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