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海運雑学ゼミナール

202 船を「彼女」と呼ぶ理由

 英語圏では、船は一般に女性名詞として扱われる。英語の場合、ドイツ語やフランス語ほどには文法上の性(gender)が明確化されていないが、こと船に関しては、異例なほど、この扱いが徹底している。
 なぜ、船が女性なのか、その理由については明確な学説もなく、あくまで文法上の慣例と考えるしかないようだが、理由のないところに理由を付けたがる人々は多い。以下は、この件に関して、かつて、まことしやかに語られていた俗説のいくつかだ。
「その周囲には、一団の男たちが付きまとい、常にてんやわんやの大騒ぎが演じられる」、「見栄えをよくするために多量のペンキ(紅、白粉)を必要とし、時には全身をきらびやかな装飾(満船飾)で飾りたてる」、「その入手費よりも維持費によって人を破局に導く」、「下半身を水面下に隠し、上半身をあらわにして、入港するや否や、まっすぐブイ(ボーイ)のもとに駆け込む」、「正しくリードするためには、当を得た男子が必要である」……。
 今どき、こんな説を本気で論じたてたらセクハラとして糾弾されるのは確実。現に、米国の通信社のマニュアルでは「it」と中性代名詞を使うようになっている。
 しかし、船が、女性同様に絶えず飾りたてておかねばならず、手間と維持費がかかるものだという考え方は、ローマ時代の詩人の作品にも登場しているほどに古い。男たちの船と女性に関する思いは、古今を通じ、あまり代わり映えがしなかったようだ。
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