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海運雑学ゼミナール

205 潜水艇:「亀」と呼ばれた木製人力潜水艇

 空を飛ぶこととともに、水に潜ることも、長い歴史を通じた人類の見果てぬ夢だった。ギリシャ、ローマ時代の哲学者たちからレオナルド・ダ・ビンチまで、古来、人が水中を自由に移動するための装置の考案例は数多い。
 その夢が現実となったのは17世紀。オランダ人ファン・ドレベルがつくった手漕ぎの木製潜水艇は、水面下すれすれではあったが、ともかく人類初の水中散歩に成功した。
 1775年に米国の技師デービッド・ブッシュネルが造った「タートル」は、より本格的だった。その名の通り亀のような形をしたこの潜水艇は、やはり木製で、内部に浮力調整用のバラストタンクをもち、人力のプロペラで推進。水中から敵艦の船底に錐で穴を開ける作戦用につくられたが、戦果を上げるには至らなかった。
 さらに1800年代初頭にはロバート・フルトンも、自作の潜水艇「ノーチラス」号で深度7〜8メートル、6時間の潜航に成功する。しかし米海軍は水中からの攻撃を「卑怯な手段」とみて、こうした新兵器に興味を示さなかった。
 兵器としての潜水艇の初の戦果は南北戦争で上がった。南軍の8人乗り潜水艇「デービッド」が、何度かの失敗の末、ついに海中から爆薬攻撃で北軍のコルベット艦を撃沈したのだ。
 しかし、これら先駆的な潜水艇の最大の弱点は、酸素のない水中では、当時すでに実用化されていた蒸気機関が使えないことだった。人力では、速力や航続距離の点で水上を走る船に歯が立たない。この問題を解決したのが電気モーターとその駆動源のバッテリーの登場だ。
 19世紀後半には、水上では蒸気機関、水中ではモーターを使う本格的な潜水艦が欧州でつくられ、さらに蒸気機関は蒸気タービンやディーゼル機関に変り、性能は飛躍的に向上する。
 船の分野で最初に原子力が採用されたのも潜水艦だった。酸素不要の原子力機関はまさに潜水艦向き。米国が1954年に完成した「ノーチラス号」は、1958年に厚い氷原下を6日間連続航行し、北極点経由で太平洋から大西洋に抜ける大記録をつくったのである。
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