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海運雑学ゼミナール

206 「逆針」は、日本独自の航海計器

 日本で航海用の磁石が使われるようになったのは室町時代以降のこと。初期には、おそらく中国の指南針のように水に磁針を浮べる方式が主だったと考えられるが、江戸時代には、より進んだ「乾式(磁針の中心を垂直の支柱で支える方式)」の和磁石が盛んに使われていた。
 和磁石の特徴は「本針(ほんばり)」と「逆針(さかばり)」の2種類がある点だ。本針は、普通の磁石のように、方位の目盛が、子(北)、卯(東)、午(南)、酉(西)の順番で時計回りに、逆針は、それが反時計回りに刻まれたもので、それぞれ用途も使い方も違う。
 まず本針は、自船の位置を知るために山や岬の方位を調べるためのもの。手持ちで目盛の北と磁針の北を合せる普通の使い方だった。
 一方、逆針は、目盛の北を船首方向に向けて据えつけて使う。目盛が通常の磁石とは逆に刻まれているため、磁針の北が指す目盛上の方位は、そのまま船の進行方向を示すことになる。日本独自のアイデアで、船乗りにとってとくに便利だったため「船磁石」とも呼ばれた。
 いずれも本体は木製で、厚手の円盤状。くり抜いた中央に磁針を置き、周囲に方位の目盛を配置したもの。厚い一枚板からろくろで挽き出し、つくりは極めて頑丈だった。
 回船の最盛期には、主要港湾の周辺に和磁石の工房がいくつも生まれ、一部は本家の中国にも輸出されたといわれる。優れたアイデアと巧みな製造技術で世界の評価を得た20世紀の日本のハイテク製品輸出にも通じるような話だ。
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