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海運雑学ゼミナール

207 フルード値が示す排水量型船の速力の限界

 船体の浮力で水に浮かぶタイプの船を排水量型船と呼び、空気圧や揚力で船体の全体または大部分を水面から上に浮上させるタイプの船を非排水量型船と呼ぶ。貨物船や客船など一般の船はほぼ前者であり、ホバークラフトや水中翼船などの超高速船が後者に属する。
 超高速船で、とくにこの形式が採用される理由は、船の前進を妨げる最大の要因の造波抵抗と摩擦抵抗を克服するためだ。
 排水量型船の速力性能をあらわす指標として用いられるのが、英国の元鉄道技師ウィリアム・フルードが考案したフルード値。船速を、船の長さと重力加速度の積の平方根で割ったものだ。このフルード値が 0.3 を越えると、造波抵抗が急激に増加し、主機の馬力を大きくしても速力はわずかしかアップしなくなる。
 このため、排水量型の高速船では、船体を細長くしたり、船体重量を軽くして、フルード値を低く押える。商船の中でもっとも高速なコンテナ船が細長くスマートなのはこのためだ。
 しかし船体を軽くしたり細長くするといっても、実用性からは限界がある。ところが船体を水面から上に浮べてしまう非排水量型船ならフルード値による制約がなくなるわけである。
 1994年に完成したテクノスーパーライナーも、この非排水量型に属する船。これまで主に超高速型旅客船に採用されてきた非排水量型を、世界で初めて積載重量約1,000トンの貨物船に適用する試みだ。すでに実験航海にも成功し、50ノット(時速約93km)の超高速海上輸送システムが実現する日も近いと期待されている。(現在は「飛翔」と名付けられ、静岡県のカーフェリー兼防災船として活躍中)
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