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海運雑学ゼミナール

212 24個の衛星の絶妙のコーラス―宇宙の電波灯台「GPS」

 船舶や航空機が、陸上の発信局からの電波で自分のいる位置を求める電波航法は、第2次大戦中に開発され、戦後、急速に普及した。ロランA、デッカ、ロランC、オメガなどの双曲線航法がその代表的なものだ。
 双曲線とは、2つの定点からの距離の差が一定な軌跡のこと。この距離の差をAとBの2つの発信局(電波灯台)からの電波の到達時間差(または位相差)に置き換え、海図上に双曲線を描けば、自船がこの双曲線上のどこかに位置することが分かる。さらにA局ともうひとつのC局との間で双曲線を描けば、2つの双曲線の交差する位置に自船がいることが分かる。
 しかしこうした地上からの電波による方式を一気に陳腐化させるような新しい技術が1990年代に登場した。米国が開発した軍事用のGPS(Global Positioning System)がそれ。高度約2万kmの周回軌道に24個の衛星を打ち上げ、地上の1地点で、常時6個ないし10個の衛星の電波が受信できるようにした宇宙の電波灯台だ。
 衛星からの電波の到達時間から現在位置を求める方式で、電波には衛星の正確な位置情報も含まれる。2次元の測定なら3つの衛星を使い、4つの衛星を使えば航空機などに必要な3次元の測定も可能で、誤差は民間向けに精度を落としたサービスでも数10mと驚異的だ。さらに、誤差を1m以下にするディファレンシャルGPS(DGPS)システムも運用されている。日本では海上保安庁によって設置された27のDGPS局によって、日本全国をカバーしている。
 精度を保つために衛星側の発信のタイミングは誤差30万年に1秒のセシウム原子時計で厳密に同期がとられている。24個の衛星が歌う電波の歌は、まさに一瞬の狂いもない正確なコーラスとなって地上に降り注いでいるわけだ。
 GPS受信装置も最近は低価格化が進み、船舶や航空機だけではなく、自動車用のナビゲーションシステムとしても普及している。
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