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海運雑学ゼミナール

214 紀元前に生まれた海の自然法─共同海損

 船が海難に遭遇したとき、危険を避け損害を軽減する目的で、帆柱を切り落としたり、積み荷を海中に投棄(投げ荷)するといった方法がとられる場合がある。
 このように航海を共にする財貨、すなわち積み荷と船舶の共同の安全のために、その一部を犠牲にしたり特殊な費用を支出した時、これを「共同海損(General Average : G/A)」とし、その損失はそれによって救われた財貨(船舶、積み荷等の価額)に応じて公平に分担されなければならないという原則は、古くから海の自然法として世界の海洋国家に受け継がれてきた。
 こうした概念が最初に登場したのは、紀元前4世紀から3世紀にかけて東地中海の中心的な海運勢力となったロード島民による「ロード海法」。そこには「共同の利益のために生じた損害は共同の分担によって補償されなければならない」という考えがすでにあらわれている。
 わが国でも「投げ荷」についての記述は、室町時代に成立したといわれる廻船式目にすでにみられ、さらに江戸時代には「振合」、「総振」といった共同海損の概念に基づく損害の共同負担の考えが普及している。
 しかし、共同海損の基本原則は同じでも、これを処理するための慣行や実務は国によって異なった発展を遂げた。このため海運業界に種々の紛糾が生じる結果となった。
 これを解消するため船主、貿易業者、保険業者の間で共同海損の精算について国際的統一を図る検討が行われ、1877年に「ヨーク・アントワープ規則(YAR)」が成立。以来、数多くの改定を重ね、今日の運送契約にはほぼ例外なくこのルールが採用されるようになった。
 ちなみに、私たちが「平均」という意味で使う「average」は、もとは「海損」を意味する言葉だった。海事用語が日常的な語彙に転化した数多い事例の一つでもある。
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