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海運雑学ゼミナール

219 丸太から転じたログブック(航海日誌)

 航海日誌への記入は、当直航海士の重要な仕事だ。海象や気象、針路、船速といった事項を1時間または4時間ごとに記入し、正午現在の船の位置、前日正午からの航行距離、平均速力なども1日1回記入する。
 さらに航行中のさまざまな出来事も時間を追って克明に記録するため、これを見れば航海中の船の状況がすべて把握できる。
 航海日誌の意義が最初に注目されたのはコロンブスの航海だ。彼は第1次航海の成果をスペイン国王に報告するために航海日誌を提出するが、国王はその記録がそのまま航路案内になることに気付き、その後、外洋を航海するすべての船に航海日誌の記録と提出を義務付ける。
 日本では、慶応3年に紀州藩の明光丸と海援隊のいろは丸が衝突。いろは丸に乗船していた坂本竜馬が相手方の航海日誌を差し押さえ、それを証拠に紀州藩から賠償金を得た事件が航海日誌による紛争処理の最初の例といわれる。
 ちなみに船の世界では航海日誌を「ログブック」と呼ぶ。「ログ」の本来の意味は「丸太」。まだ航海計器が発達していなかった時代に、海面に丸太を投じて速力を計測した。その名残で、以後、速力を測る装置全般をログと呼ぶようになるが、それがさらに転じたものだ。
 現在では、航空機の分野でも航空日誌をログブックと呼び、さらに機械などの試験記録やコンピュータの利用記録などにもログないしログブックという言葉が使われる。
 最新の電子航法技術を満載した現代の船舶や航空機と丸太のミスマッチな関係は、海運の長い歴史を通じた文化全般への影響力の大きさを物語る事例の一つといえよう。
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