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海運雑学ゼミナール

220 「台風」の語源はアラビア語?

 「台風」は日本人にとって殊のほか馴染み深い言葉の一つ。漢字で表記されるせいもあって、もともと日本語と思っている人も多いはず。
 しかしこの言葉の本来の語源は「嵐」を意味するアラビア語の「tufan」や「旋風」を意味するギリシャ語の「τυφων」にあるとする説が有力だ。
 かつては、発音的にみて中国語の「大風」から転じたもの、あるいは「台湾の風」という意味からきたという説もあった。中国語が本来の出自で、それがヨーロッパや日本に広まったという考えである。
 しかし英語の「typhoon」は、イギリスの作家 Conrad の名作「Typhoon」(1902)にもみられるようにもともと世界的に使われていた言葉。その原形となる「touffon」も、16世紀頃のイギリスの文献に登場している。その語源が、地理的にも文化的にも結び付きの強いアラビア語やギリシャ語にあるという説は信憑性が高い。
 インド経由の西アジアと中国の交易の歴史は古く、9〜10世紀のアラビア語の文献「シナ・インド物語」には、インドや中国についての広範な知見が記述され、さらに宋や元の時代にはイスラム船が頻繁に中国に来航していた。
 当時のアラブの航海者たちが、しばしば強烈な台風の洗礼を受けたことは想像に難くない。インド洋の季節風として有名な「モンスーン」もアラビア語の「mausim」が語源といわれる。アラブ人は、大航海時代以前にはインド洋から東アジアへの海路に最も精通した民族だったのである。
 これらの点を考えても、台風の語源をアラビア語に求めるのは、ごく自然な結論であるといえそうだ。
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