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海運雑学ゼミナール

224 「2乗3乗の法則」でわかる大型化で輸送効率が高まる理由

 コロンブス船隊の旗艦「サンタマリア号」は、わずか100総トン程度の現代でいえば小型船だった。その後、時代を追って船の大型化は進み、今や数十万重量トンの巨大タンカーまで出現した。その背景には建造技術の進歩もあるが、それ以上に大きな理由が経済性の向上だ。
 船の寸法を大きくした場合、船の容積は3乗で増えるのに対し、船の表面積は2乗でしか増えない。船の受ける抵抗は主に表面積に対して働くから、当然抵抗もおよそ2乗の関係となる。これを「2乗3乗の法則」という。
 抵抗の増加で燃料消費量が増えても、貨物の積載量がそれ以上の割合で増えるため、貨物量単位でみれば燃料効率は向上するわけだ。
 ただしこれはあくまで計算上の数字。実際に船を運航するうえでは、つねに大きい方が有利というわけにはいかない。
 例えば荷役効率の問題がある。船型を大型化しても、それに見合う荷役能力の向上がなければ、荷役時間が長びくだけで、全体の効率は低下する。大型化がタンカーや鉱石専用船など荷役の大部分を機械化できる船種で進んだのはこのためだ。定期貨物船の大型化も、コンテナ化による荷役の効率化が重要な契機だった。
 ほかにも、大型船には、通航可能な水路や港湾が限定されることや、海運市況の動向などさまざまな制約が加わる。
 これまでに建造された最大の船は56万4,763重量トン(全長:458m)のタンカー「シーワイズジャイアント」(1980年)。その後100万重量トンを越すタンカーが構想されたこともあったが実現はしていない。また石油危機以後、50万重量トン以上のタンカーはほとんど建造されなくなった。
 船舶の大型化には、やはり簡単に割り切れないさまざまな壁が存在するようである。

※「シーワイズジャイアント」は1980年日本鋼管津造船所で建造(56万4763DW)され、1986年イラン・イラク戦争において沈没。1989年引き揚げられ、「Jahre Viking」と改名(55万5819DW)された。
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