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海運雑学ゼミナール

225 いくら漕いでも進まない船幽霊の秘密は「内部波」

 船の前進を妨げる最大の要因が造波抵抗。これは船が前進するとき船体の周囲に発生する波による抵抗力で、これをいかに軽減するかが、船の速力や燃料効率を大きく左右する。
 しかし波ができるのは水面上だけとは限らない。例えば河口などでは、時に海水と真水が層状に分離した場所があらわれる。そこでは、船は水面上の波に加えて、2つの層の境界にももう一つの波をつくり出す。これが「内部波」で、これにより船は二重の造波抵抗を受け、前進が著しく妨げられる。
 波のない静かな海で船のスピードが急に落ち、あとはいくら漕いでも前へ進まない。そんな現象を昔の日本の船乗りたちは「船幽霊」と呼んで恐れた。海の怨霊が船を引っ張って進まなくしていると信じていたのだが、その原因は、科学的に説明すればこの内部波によるものだ。
 種明かしをすれば簡単なことだが、そうした知識のない時代の人々には大変な恐怖だっただろう。しかし現代においても速力や燃料効率を向上させようとする造船技術者の前に立ちはだかる最大の障害が、造波抵抗というやっかいな怪物である点に変わりはない。
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