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海運雑学ゼミナール

229 日本の食生活に浸透する外国産の「日本の味覚」

 日本が水産物の輸出国から輸入国に変わって久しい。昭和40年代後半から急速に伸びはじめた水産物輸入は、現在、エビ、マグロ、タラ、サケ、イカ、タコ、カニなどを中心に、国内の魚介類消費量(飼肥料を除く)の約40%を占める。牛肉や豚肉、鶏肉も、近年、輸入が急増している。これに、新たに加わった輸入食材の成長株が、タマネギ、カボチャ、ブロッコリー、アスパラガスなどの生鮮野菜だ。
 野菜の輸入は、従来、冷凍品や塩蔵品が主体で、生鮮品は不作時などの補完輸入に限られていた。しかし最近は、需要の通年化と円高の影響で、生鮮野菜の輸入量も急増している。
 これに大きな役割を果たしているのが日本の海運会社が取り組んできた鮮度保持輸送技術。コンテナ内の温度や湿度を生鮮品種類に合わせ最適にコントロールし、さらに植物自身から放出され、植物の熟成を促進するエチレン・ガスを吸着・除去するなど、高度なノウハウでコンテナ内の環境を制御し、通常の冷蔵保存の5倍前後にまで鮮度保持期間を伸ばした。
 さらに、最近、注目されるのが、開発輸入と呼ばれる食材輸入形態。天ぷらやフライ用に加工されたエビから、串に刺した焼き鳥、ロールキャベツ、春巻きやギョウザ、解凍するだけで食べられるイカや甘エビの刺し身。焼きナスやカボチャの煮物など品目はバラエティーに富む。
 国内メーカーや商社が、タイや中国に技術や資本を提供し、材料を現地で日本向けに加工したものを輸入する方式で、大手スーパーや居酒屋チェーンなどを中心に市場は拡大中だ。
 こうした動きを日本の農業や食品業の空洞化と嘆くか、内外価格差是正の切り札として歓迎するかは見方によりさまざま。しかし外国からやってくる「旬の味覚」や「おふくろの味」が、今後、日本の食品流通や食文化に大きな影響を与えていくことは間違いない。
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