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海運雑学ゼミナール

247 鳥は古代の航海用レーダー

 人類が大洋への航海に乗り出した歴史は古い。太陽や北極星、南十字星の位置によって緯度を知る方法は、大航海時代以前、すでにフェニキア人やヴァイキング、ポリネシアやミクロネシアの航海民族によって使われていた。彼らは、簡単な天測用具で測定した緯度の情報に、さらに経験によって蓄積された、海域ごとの風向や潮流、水深、海水の色などの知識を組み合わせ、陸地の見えない大洋上でもかなり正確に自船の位置を知ることができたと考えられている。
 さらにこうした航法技術を補うユニークな手段が鳥の利用だった。ハトやカラスなどの陸鳥を船に乗せておき、陸地や島が近づいたと判断される地点で船上から放す。鳥は、陸地を見つければその方向に飛んでゆくから、その行く手に陸地が存在することがわかる。もし陸地が近くになければ、鳥は船に戻ってくる。
 海面上1メートルの位置から見た水平線までの距離は、およそ2.1海里(1海里は1.852キロメートル)にすぎない。しかし100メートル上空を飛ぶ鳥の位置からは、約20海里までの範囲が見わたせる。人間の能力を超えた鳥たちの本能の眼は、あるいは水平線のさらに彼方の陸地の存在さえ感じ取ったかも知れない。
 こうした鳥の利用が相当古くから行われていたことは、聖書のノアの箱船の記述でもわかる。大洪水のあとで、地上から水が引いたのを最初にノアに知らせたのは、箱船から放され、やがて木の枝をくわえて帰ってきたハトだった。 経験豊かな古代の船乗りにとって、空高く飛ぶ鳥たちの眼は、まさに航海用レーダーに匹敵する重要なものだったのである。
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