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海運雑学ゼミナール

251 ついに陽の目を見ずに終わった19世紀の二重反転プロペラ

 スクリュープロペラは、ディーゼル機関や蒸気タービンなどの主機とともに、船の推進力を生み出す重要な装置。その効率を高めるために、これまで多くのタイプが考案されてきた。
 二重反転プロペラもその一つ。2つのスクリュープロペラを前後に配置し、互いを逆方向に回転することで 前方のプロペラの回転流エネルギーを後方のプロペラが吸収するようにした省エネ効果の高いプロペラだ。
 日本の造船会社が世界に先駆けて実用化したものだが、そのアイデア自体は古い。考案したのは、19世紀前半の英国で、ライバルのスミス(Francis Pettitt Smith)とスクリュープロペラ開発にしのぎを削ったスウェーデン陸軍出身の技術者エリクソン(Captain Ericsson)。
 スミスの考案したプロペラはスクリュー(ネジ)の形状をそのまま踏襲し、円筒の軸に一つのネジ山を何回か巻き付けたもの。しかし最終的に商品化したのは2つのネジ山をそれぞれ半巻きした2枚羽のタイプだった。
 一方、エリクソンが考案したのは、円盤に何枚もの羽根をつけたプロペラを前後2枚重ねにし、それぞれを反対方向に回転させるという、複雑なもの。このプロペラをつけた実験船は、1839年にテームズ川で行った実験で100トンの石炭を積んだ4隻のバージを引いて川を遡ることに成功する。
 しかしその後の実験で、プロペラを1枚にしたところ、さらに推進効率が良くなってしまった。このため世界最初の二重反転プロペラは、ついに陽の目をみることなく終わる。
 現代のような高度なシミュレーション技術がなかった当時は、いかに着想が優れていても、その可能性を最大限に引き出すような精緻な設計は無理だったのだろう。
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