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海運雑学ゼミナール

260 操船シミュレーターで体験する実船さながらの仮想航海

 航空機の世界では、かなり以前から操縦訓練用のフライトシミュレーターが使われていたが、最近は、船舶の分野でも、3次元映像や音響などのマルチメディア技術を駆使した操船シミュレーターが積極的に導入されている。
 シミュレーターは、実船を模して作られたリアルな模擬船橋とその前面に設置されたラウンドスクリーン、データ計算や画像処理用のコンピュータなどによって構成される。
 シミュレーションに使われるデータには、タンカー、LNG船、コンテナ船など多様なモデルが用意され、港湾、狭水道など、実際の地形に基づくデータも豊富。さらに風、波、潮流などの外力も任意に設定できる。
 こうしたデータをもとに、シミュレーターは、時々刻々変化する周囲の景観から、船体の傾斜に応じて傾く水平線、航跡を残してすれ違う他船、エンジン回転数に応じて変化する機関音、さらには汽笛やカモメの声まで、航海中のブリッジの状況をリアルに再現し、被訓練者の操船指示に応じて、実船さながらの挙動を示す。
 威力を発揮するのは、航海中、頻繁には起こらない場面や非常時を想定した訓練だ。例えば出入港を実際に経験するのは、外航タンカーなどでは1ヵ月に1回程度。しかしシミュレーターなら短期間に何度でも集中して訓練できる。
 さらに最近は、港湾建設のコンサルティングなどにも応用される。まだ設計段階の港湾を完成状態で表現し、配船予定の船舶が実際に入出港する様子を事前にシミュレートするためで、机上の計算ではなく、実際に操船する様子を体験してみることで、港湾機能についての事前評価はより現実的なものになる。
 操船シミュレーターが作り出す実船さながらの仮想航海は、配乗定員の少数化やハイテク化の進む海運の安全運航にとって、今後、欠かせない重要技術の一つとなっていくはずだ。
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