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海運雑学ゼミナール

263 海底の土質が左右する「錨かき」の良し悪し

 海図に示されている底質(海底表面の土質)は、水深とともに船舶にとって重要な情報だ。水深が十分なら海底が何で覆われていようと航行上問題なさそうだが、これが問題になるのはじつは船が止まっているとき。入出港の時間調整や台風の襲来などで錨泊する際、その場所の底質が「錨かき」に大きく関係するからだ。
 錨かきとは、錨の効果(把駐力)を示す言葉で、錨が海底の土砂にしっかりと食い込み走錨の危険が少ない場合を「錨かきが良い」といい、逆の場合を「錨かきが悪い」という。
 錨の効果は、錨の形状や投錨方法などによっても左右されるが、底質による影響も非常に大きく、一般に錨かきが良いのは泥質の海底、悪いのは岩や砂地の海底とされ、台風で避泊するときなど、錨かきの悪い場所に停泊すれば事故につながる危険性も大きく、船長や航海士にとって錨泊場所の底質は極めて重要な情報となる。
 しかし近年、海図測量における音響測深機の登場以来、海図上の底質記号の表示密度が粗くなってきている。かつては計測用ロープのついた鉛錘を投げ下ろす方法で水深を測っていたが、このとき同時に海底の土砂を採取できた。このため海図上で水深が示されている個所には、必ず底質記号も表示されていたが、音響測深機を利用するようになって、底質調査は別個に行わざるを得なくなったのがその理由だ。
 しかし巨大船が錨泊する東京湾、伊勢湾、大阪湾などでは、国際水路会議の決定に基づいて、柱状採泥によるより綿密な調査を行い、表面の土質だけでなく、その下層の錨が実際に着底する深さの土質も海図上に表示されており、錨泊の一層の安全性が図られている。
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