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267 ゴーストライターが書いたマルコ・ポーロの世界旅行記

 モンゴル帝国の支配者フビライ・ハーンに重用され、西欧人が見たこともない東洋の国々を自由に見聞した偉大な東方の旅行者マルコ・ポーロにとって、帰国後の暮らしは、どうやらあまり快適なものではなかったようだ。
 マルコが帰国した当時、ベネチアとジェノバは地中海の海上貿易の覇権を競って激しく争っていた。両者は1298年9月6日、ダルマチア海岸沖の海戦でついに雌雄を決するが、勝利したのはジェノバで、ガレー船の指揮官として参戦していたマルコは7,000人の捕虜の一人としてジェノバの獄舎につながれた。
 このときたまたま同じ獄舎に居合わせたのがルスティケロという無名の冒険物語作家だった。マルコの思い出話を聞き、壮大な冒険物語の構想を得たルスティケロは、マルコを口説いて、興味深い異郷の旅の膨大な記録を後述させ、ついにあの「世界旅行記」完成させる。
 なぜマルコ自身が、これを書こうとしなかったかは良く分からない。しかし、もしこの幸運なゴーストライターとの出会いがなかったら、その後何百年もの間人々を魅了し、コロンブスに東洋への新航路発見を夢見させた偉大な著作は生れていなかっただろう。そしてもしそうだとしたら、大航海時代の始まりもまた何世紀か遅れていたかもしれない。
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