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海運雑学ゼミナール

271 鋼船時代の航法技術を支える電気仕掛けの地球ゴマ

 19世紀後半以降、鉄や鋼が木に変わって船舶材料の主流になると、磁気コンパスには大きな誤差が生じるようになった。船体が磁気コンパスに与える誤差を自差と呼ぶが、これが10度〜20度にも達するようになり、沿岸航海中に座礁する船も多くなった。そこで登場したのがジャイロコンパス。その原理を発見したのはフランスの物理学者フーコー(1819〜1868)だ。
 ジャイロコンパスの原理は「高速回転するこまは常に一定の方向に回転軸を保つとともに、この回転軸の方向を変えようとする力に対し直角の方向に傾く」というもの。フーコーはさらにそこから「2軸の自由をもち高速回転するこまの回転軸は極以外では常に真北を指す」という結論を導いた。子どものころ遊んだことのある人も多い地球ゴマもこの原理によるものだ。
 この原理を応用して1908年にジャイロコンパスを実用化したのがドイツのアンシュッツ。その後、アメリカのスペリー、イギリスのブラウンなどが続く。電動モーターで高速回転し、船体材料の影響を受けないジャイロコンパスは第一次世界大戦中に磁気コンパスに替わる重要な航海計器として普及。小型化、高精度化も急速に進み、航空機の航法装置としても発展した。
 さらに1960年代に登場したのがオートパイロット(自動操舵装置)だ。ジャイロコンパスの示す正確な方位を基準に舵を制御し、船の針路を自動的に保つこの新しい航法装置によって、ブリッジでの乗組員の作業負担は大幅に軽減され、針路保持精度も高まる。
 20世紀初頭に登場した電気仕掛けの地球ゴマは、その後、全盛を迎える鋼船の時代を航法技術の面から支える、磁気コンパスにも劣らない偉大な発明となったのである。
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