日本船主協会

トップページ海運雑学ゼミナール

海運雑学ゼミナール

272 新海洋法発効で脚光を浴びる海底の地形図―水深図

 海図には、航洋図や航海図、海岸図などの航海用海図のほか、水深図、漁業用図、小港湾図など様々なものがあるが、なかでも一般の人から見て興味深いのが水深図(パシメトリックチャート)だろう。
 水深図は精密な等高線で描かれた海底地形図で、大陸棚や海底山脈、海溝などの姿が陸上の地形図のように直感的に理解できるようにつくられている。
 わが国では、1980年以降、海上保安庁水路部が相次いで発行した「縮尺100万分の1海底地形図シリーズ」が代表的なもの。「北海道」「東北日本」「中部日本」「西南日本」「南西諸島」の全5版からなり、主に海底資源開発や、海底地震・海底火山・プレートテクトニクス理論などの学術研究に利用されている。
 こうした地域ごとの水深図に対し、世界の海洋をすべて網羅した水深図が「大洋水深総図」。各国の水路機関の協力の下に国際水路局(IHB/国際水路機関事務局)が発行する1,000万分の1の海底地形図だ。
 初版が刊行されたのは1904年。この画期的な企てに惜しみない財政援助をしたのが当時屈指の海洋学者ととして知られたモナコ国王のアルバート一世だった。大洋水深総図は、戦争の影響で未完に終わった版もあるが、版を重ねるごとにより精細で正確なものになり、現在は1982年に完成した第5版が最新版。地球物理学や海洋研究の分野で重要な役割を果たしている。
 ところが最近、別の観点からも水深図の重要性が高まってきた。新しい国連海洋法条約で「大陸棚」の概念が深海底に接続する大陸棚周縁部にまで拡大され、領海基線から200海里以遠でもこの範囲に含まれていれば排他的経済水域に設定できるようになった。これに伴って大陸棚の限界を確定する科学的・技術的資料の一部として正確な水深図が不可欠になったためだ。
 わが国の200海里経済水域は国土面積の10倍以上の広さに達するが、大陸棚周縁部の海底地形を綿密に調査することで、この範囲はさらに拡大すると見られている。
前のページへ海運雑学ゼミナールタイトル一覧へ次のページへ