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海運雑学ゼミナール

273 プトレマイオスに先駆けた古代中国の高度な地図作成技術

 地図を緯度と経度の方眼で区切り、その座標系によって、不規則な海岸線や河川、山脈、湖沼などの相対的な位置や形状を正確な縮尺のもとに表現する技術を考案したのは2世紀のプトレマイオス。しかしその後は、メルカトル(1512〜1594)が独自の投影法で、その図法を復活するまで、地球球体説を否定するキリスト教的世界観のなかで完全に忘れ去られていた。
 ところが中国では、プトレマイオスに先駆けて方眼による正確な地図作成技術が確立され、その後も、途絶えることなく、その技法が発展していた。
 中国で発案された方眼システムは、プトレマイオスが地球球体説に基づいていたのに対し、あくまで地球は平面であるという考えに立っていた。しかしその点はさして問題ではなく、高度な数学的知識に裏付けられた地図の精度はきわめて高いレベルに達していたようだ。
 この中国式方眼システムを最初に理論化したのは張衡(78〜139)で、それを大成したのが3世紀に活躍した中国のプトレマイオスともいわれる裴秀。晋王朝に仕えた裴秀は、高度な技術を駆使して18葉にわたる詳細で正確な中国全土の地図を完成した。
 やがてその技法は、地図上の座標と天体の座標を結びつけるまでに発展し、宋の時代には、現代のように北を上に置く習慣も定着していた。
 ヨーロッパでの地図の発達が、主に航海のためだったのと異なり、歴代の中国王朝が、こうした地図の作成に力を注いだのは、その広大な版図の管理のためだった。はるか数千年の昔から近代に至るまで、中国が巨大国家として君臨し続けられた秘密の一つは、この高度な地図作成技術にあったのかもしれない。
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