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海運雑学ゼミナール

288 製鉄による森林荒廃がうながした鉄船の登場

 鉄鉱石を高温で溶解し、銑鉄を取り出す高炉法が誕生したのは、15世紀頃のドイツのライン地方といわれる。しかし高炉から取り出された銑鉄は炭素含有量が多くもろいため、用途はほとんど鋳物に限られた。
 その後、銑鉄を大量の酸素を送りながら高温で熱して炭素を燃やし、より加工しやすい軟鉄を大量につくる技術が生まれ、イギリスを中心に製鉄業は一大産業として発展した。
 しかしこの時代に鉄を溶かす熱源として使われたのは木炭だった。このためイギリスでは森林の伐採が進んだ。18世紀に入って石炭による製鉄法が確立するが、すでにイギリスの森林は枯渇し、これがイギリスのもう一つの重要産業である造船業に影響を及ぼした。造船用の良質の樫材の不足である。
 一方、ライバルのアメリカは、国内の豊富な木材を使って高性能のクリッパー型帆船を大量建造し、海上貿易でのイギリスの優位を脅かしていた。このため鉄船建造に及び腰だったイギリスもやむなく鉄の使用に踏み切る。最初につくられたのは一部に鉄を使った木鉄交造船だったが、やがて鉄の強度が予想以上に高いことが分かり、19世紀半ばには鉄船が相次いで登場、そして鋼船の時代に突入する。
 近代的製鉄業の発展は、それまでの造船に不可欠な木材の枯渇というネガティブな部分と、近代的な船舶の建造に適した新たな素材の供給というポジティブな部分の両面で、以後の造船技術の飛躍の原動力となったわけである。
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