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海運雑学ゼミナール

294 阿蘭陀風説書がもたらした鎖国時代の海外ニュース

 鎖国時代唯一の国際貿易港だった長崎は、海外情報の収集という面でも重要な窓口だった。幕府は、長崎に入港するオランダ船がもたらす情報に大きな関心をよせ、入港の際、世界の動静を伝えるニュースダイジェストともいうべき風説書の提出を義務づけた。
 これがいわゆる「阿蘭陀風説書」で、初期の頃は、当時の幕府が警戒していたポルトガル・スペイン関係の情報が主体だったが、その後、ヨーロッパ全般、インド、中国を中心としたほぼ世界中の情報が網羅されるようになった。
 内容は、戦争や和平、政変など国際情勢の変化、国王の即位や婚姻や死去、科学技術の動向など幅広く、これを通じて幕府は世界の国々の情勢を正確に把握していた。
 原文はオランダ語で、提出と同時に長崎のオランダ通事によって翻訳され、わずか数週間で江戸幕府に届けられた。当時としては異例なこの処理スピードにも、幕府が風説書の海外情報に示していた関心の高さがあらわれている。
 幕府はこの風説書でフランス革命やアヘン戦争、ペリーの日本遠征などの情報もいち早くキャッチしており、とくに近隣の中国で起きたアヘン戦争のニュースは幕府に衝撃を与えた。
 これ以降、重要な事件については、より詳細な情報を盛り込んだ「別段風説書」の提出も求めるようになり、アヘン戦争の際には、これらの情報をもとに西洋式砲術の導入に踏み切るなど、国策決定の上でも重要な役割を果たした。
 交易面でかたくなに門戸を閉ざしていた鎖国時代の日本も、長崎という情報収集アンテナを通じて、我々が思っている以上に熱心に、世界からの情報に耳を傾けていたわけである。
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