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海運雑学ゼミナール

296 フナクイムシの被害を防いだ木造船時代の画期的発明

 推進効率の低下を招く船底への海洋生物の付着は現代の鋼船にとっても頭を悩ます問題だが、木造船の時代には、これが時には沈没さえ引き起こす重大問題だった。
 その元凶はフナクイムシ。「ムシ」といっても実はフナクイムシ科の二枚貝だ。貝殻は1センチにも満たない小さなもので、体の一部だけを被っており、体は貝殻から外に細長く伸びて、成長すると1メートル前後にも達する。
 貝殻の前半部はヤスリ状で、これを動かして船底外板に穴を掘り、セルロースを消化しながら木部に深く侵入するため、ついにはこの穴から浸水したり船体に亀裂が生じたりする。
 このフナクイムシを退治する昔からの方法は、船を陸上げして船体を横に倒し、周囲でたき火をして船底を乾燥させることだった。「焚船」または「船たで」といわれるこの作業は、日本では漁民の縁起かつぎとしても行われたが、面倒な仕事であるのに変わりはなかった。
 しかし18世紀になってフナクイムシの被害を防ぐ画期的な発明が生れる。船底に銅板を張るという方法だ。銅が酸化すると緑青と呼ばれる青錆が生じる。この緑青から亜酸化銅が海水に溶け出し、これが海洋生物に対し毒性を持つためフナクイムシの付着が妨げるわけである。
 画期的な発明ではあったが、その後1世紀ほどの間に船の世界は鉄船の時代に入ってしまった。それまでの木造船の長い歴史を考えれば、遅すぎた発明といわざるをえないかもしれない。
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