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海運雑学ゼミナール

300 イルカに学んだ水中の目〜ソナー

 イルカやコウモリには人間を含め他の生物にはない特殊な知覚能力がある。「反響定位」と呼ばれるもので、自分の発した超音波の反響によって障害物の位置や餌の在りかを知り、自分の運動力向を決める能力をさす。
 水中で超音波を発し、物体に反射して戻ってくる音波を高感度の聴音機でとらえ、その方向や距離、形状を把握するソナー技術は、こうした動物の特殊な能力を模倣したものといえる。
 原理としては電波を使ったレーダーとよく似ているが、電波は水中を伝わらない。一方、音波は水中だと大気中の4倍以上の速度で伝わり、到達距離も長い。音波は、水中では電波に代わることのできる優れた信号伝達手段なのだ。  ソナーは第一次世界大戦中に対潜水艦作戦のために開発され、第二次世界大戦から冷戦時代にかけ軍事用を中心に発達した技術。その後、応用範囲は大きく広がり、今や海事分野では欠かせない技術の一つとなった。
 最近はレジャーにも使われる魚群探知機はその代表例だ。船舶分野では潮流の影響のない対地速度の測定を可能にしたドップラーソナーや音響測深機が主な応用分野。巨大タンカー接岸時の秒速数センチという微妙な速度制御にもドップラーソナーの一種の接岸速度計が使われる。海洋調査船に搭載されているマルチナロービーム音響測深機は、海底地形の調査や海図作成に不可欠な技術だ。
 科学技術は意外に自然の模倣が不得手なようで、四つ足で歩く乗り物も翼を羽ばたく飛行機も作られなかった。脳と同じ原理で動くコンピュータもまだ夢の段階だ。ソナー技術は、動物の能力の模倣に成功した科学技術史上のまれな事例の一つといえるかもしれない。
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