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海運雑学ゼミナール

301 舵輪の登場で左右逆転した舵取り命令

 船の世界では伝統的に右舷をスターボードと呼び、左舷をポートと呼ぶ。これはバイキング船の舵(Steer)が常に右舷にあり、舵のない左舷が港(port)に接岸する側だったことに由来するといわれる。商船の世界では、船長や航海士が操舵手に舵取りの方向を指示する場合にもこの呼び方を使い、右回頭の場合はスターボード、左回頭の場合はポートサイドと指示する。
 しかし、かつて右回頭がポート、左回頭がスターボードだった時代もあった。
 その頃の舵は、舵材の上部に取りつけた舵柄を左右に動かして舵材の下部に舵柄と逆の向きに取りつけた舵板を動かすもので、舵柄を左(ポート)方向に動かせば舵板は右を向いて船は右へ回頭し、右(スターボード)方向に動かせば舵板は左を向いて船は左へ回頭する。
 舵柄を動かす方向を直接指示するため、当時はこれが間違いの少ない方法だったようだ。ところが舵取り装置が現在のような舵輪に代わると、回頭方向と逆の方向を指示するこのやり方は逆にわかりにくいものになった。
 このため従来の慣習を捨てて回頭方向を直接指示する方式に変える国も現れたが、異なる国の船員が乗船する船ではかえって混乱し、それが原因で衝突事故さえ起こるに至った。
 こうしたことから1929年には「海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)が改定され、舵取り命令を直接法(右回頭はスターボード、左回頭はポート)に統一する決議が採択され、現在に至っている。
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