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海運雑学ゼミナール

302 双胴船の常識を覆した波を切り裂く新型高速船

 平行する二つの船体を一つの甲板で結んだ双胴船は、船の歴史の中でもかなり古くから登場している。南太平洋の島々で今も使われているカタマランと呼ばれる双胴の丸木舟はその代表だが、商船に応用された歴史も古く、1877年にはドーバー海峡の連絡船として外輪を備えた双胴船「カレー・ドーバー号」が登場した。
 双胴船には、甲板面積が広く旅客や貨物のスペースが大きくとれる、安定性が高いという優れた特長がある。それでも船の世界で主流になれなかったのは、船体が水流と接する面積が広いため摩擦抵抗や造波抵抗が大きく、速力が出ず、燃料費がかさむためだった。
 ところが近年、双胴船タイプで速力や経済性の問題を克服したものが相次いで登場している。
「SSTH(Super Slender Twin Hull)」はその一つ。双胴船という特徴を生かして、二つの船体を単独ではほとんど復元性がないような極端に細長いものにすることで、造波抵抗を大きく減らしている。
 これと似ているのが「波浪貫通型(ウェイブピアシング)」と呼ばれるタイプ。双胴の船首部分を波を貫通するような鋭い形状にすることで、波による動揺と造波抵抗を大きく低減した。1992年に38年ぶりに大西洋ブルーリボンの記録を更新したのもこのタイプの外洋フェリーだ。
 これらとは別の発想に立つものもある。「半没水型双胴船」は、魚雷型の船体を完全に水中に沈め細い支柱で船体上部を支える。水中では造波抵抗が発生しないため、抵抗が生じるのは船体の上部と下部をつなぐ細い支柱部分だけだ。
 こうした新タイプの高速双胴船は水中翼船などとは異なり、船体の浮力を利用して水上に浮かぶ排水量型のため、大型化も比較的容易で、すでに波浪貫通型では全長100メートル近いものも登場している。
 優れた特徴を持ちながら、なかなか陽に当たることのなかった双胴船だが、こうした技術進歩によって、21世紀の船の世界では、現在よりずっと重要な位置を占めているかもしれない。
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