日本船主協会

トップページ海運雑学ゼミナール

海運雑学ゼミナール

303 東洋で生まれた櫓は世界に誇れる人力推進法

 船の動力として風力が利用されるようになってからも、人力は長いあいだ船の重要な動力であり続けた。ローマ時代のガレー船やバイキング船のように速力と運動性能が要求された船や、商船の場合でも入出港時などには、どうしても人力による操船が必要だった。
 こうした場合にヨーロッパの船で使われたのは櫂(オール)だが、東南アジアや中国や日本では櫓が使われた。櫂と櫓は手で漕いで推力を得る点は似ているが、その原理は全く違う。櫂は水泳でいえばクロールの手の動きと同じで、単純に水を後ろへ掻くだけだ。
 一方の櫓は、魚のひれの動きに似ている。船の後端に支点をおいて、飛行機の翼のような断面の櫓の先端を半円を描くように左右に動かし、行きと戻りで逆方向に切り替わる抑え角から生れる揚力で船を前進させる。これはスクリュープロペラと同じ原理になる。
 櫂の場合は櫓よりも速力が出るが、全力で漕ぎ続けられる時間は短い。一方、櫓の場合はスピードで櫂にやや劣るものの、何時間でも一人で漕ぎ続けられる極めて効率的な推進方法だ。
 やがて蒸気船の時代に入って、船の推進力に人力は不要になるが、当初、推進器として用いられた外輪は、櫂の動きをそのまま機械的に模倣したものといえる。しかしその後、船舶の推進器の主力となったのは櫓と同じ原理のスクリュープロペラだった。
 有名な英国海軍による綱引き競争では、そのスクリュープロペラ船が外輪船に圧勝した。ペリーが幕府の役人の乗る小舟の櫓走の速さに驚いたという記録もある。櫓は人力の推進方法としては世界に誇れる優れた技術だったのである。
前のページへ海運雑学ゼミナールタイトル一覧へ次のページへ