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海運雑学ゼミナール

304 重油への燃料革命で花開いた客船黄金時代

 蒸気機関の燃料には長い間石炭が使われていたが、20世紀初頭になると、石油産業が勃興し、石炭と比べて安価な重油が供給されるようになった。
 これに着目し、1908年に世界初の重油専焼タービン船として竣工したのが、東洋汽船の天洋丸。その後、ディーゼル機関が発達したこともあり、石炭から重油への転換は急速に進む。
 石炭と比べた重油の長所はいくつもあったが、最も注目すべき点は、船内のスペース効率の向上だった。その頃、貨物船や客船は大型化が進んでいたが、貨物積載量や船客スペースを増やそうとすれば、その分、燃料庫の容積や火夫の人数も増え、それによって大型化によるスペース拡大効果が相殺されてしまうというジレンマに、当時の海運業者は悩んでいた。
 液体燃料である重油は、石炭のように大きな燃料庫を必要としない。また石炭を運んだり、石炭をかき混ぜて火力を一定に保つ必要もない。このため、石炭を使う場合に不可欠だった大勢の火夫も必要がなくなり、その分、乗組員の居住スペースも小さくできた。
 こうして船内のスペース効率は高まり、貨物船では、その分、貨物の積載量が増えた。しかし当時、その恩恵を最も受けたのは客船だった。
 豪華さを競い合っていた当時の客船は、贅沢な客室、大食堂やシアター、プールなど陸上の一流ホテルをも凌ぐ設備のために多大なスペースを必要とした。重油専焼化で生まれたゆとりのすべてを、こうした乗客設備や、サービス向上のために増員された客室乗務員の居住区として使うことができたのである。
 燃料を重油に替えることで蒸気タービンの性能も向上した。船型は大型化しても燃料消費量はむしろ低減し、かつ速力は大幅にアップした。こうして太平洋ブルーリボンの記録を次々と塗り替える高速大型客船の全盛期が到来する。
 陸上では自動車、空では飛行機を誕生させた20世紀のエネルギー革命は、船の世界でも重要な革新の原動力となったのである。
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