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海運雑学ゼミナール

305 フロイスの「日本覚書」が伝える近世日本の暮らしぶり

 ルイス・フロイスは16世紀後半に30数年にわたって日本に滞在したイエズス会の司祭。彼が残した「日本覚書」は、当時の日本の風俗習慣をこと細かにとりあげ、その一つ一つをヨーロッパのそれに対比させながら記述した、歴史研究の視点からも興味深い文献だ。
 15の章にわたって、当時の日本の男女の風采や衣服、僧侶の風習、食事や飲酒の慣習、家屋や武器や芸能などについての観察をこと細かに記しており、日本の船や船道具、船乗りの慣習についても興味深い1章が設けられている。
 船についての記述は30項目ある。「我らの船には肋骨と甲板がある。日本のにはない」「我らの船には布製の帆がある。彼らのはすべて藁の帆である」「我らの水夫は漕いでいる間は坐っており、しゃべることはない。日本の水夫は立ち上がり、ほとんどいつも歌っている」「我らの船は昼も夜も航行する。日本の船は、夜は港に停泊し、昼に航行する」といった当時のヨーロッパ人の視点から見た日本の船や船乗りについての観察の視点はじつにユニークだ。
 すべてがフロイス個人の見聞によるもので、正確さにやや疑問な点もある。対比されるヨーロッパの記述にしても、来日後すでに数十年を経た彼の知識がその後のヨーロッパ事情を正しく反映していたかどうかという疑問も残る。
 とはいえ近世初期の日本人の生活全般をここまで網羅的に記述した文献は日本にはない。好奇心旺盛な宣教師の「覚書」が、我々日本人にとっても、歴史資料として極めて貴重であることはいうまでもない。
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