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海運雑学ゼミナール

307 アメリカの威信をかけた最後のスーパーライナー

 1838年に「グレートウエスタン」が最初のタイトルホルダーとなって以来、150年余りにわたり数々の高速ライナーが大西洋横断の平均速力を競ったブルーリボン競争。その掉尾を飾るように登場したのが、アメリカの威信を賭けた客船「ユナイテッド・ステーツ」だった。
 1952年に樹立した35.59ノットの世界新記録は、1990年に外洋型カーフェリー「ホーバースピード・グレート・ブリテン」が記録を塗り替えるまで保持され、タイトルホルダーとしての期間でも歴代最長だった。
 そのスピードの秘密は、船体の徹底した軽量化と巨大な機関出力にあった。総重量はライバルのクイーン・メリーの約6割。これに対し機関出力はクイーン・メリーの1.5倍以上に達した。その設計概念は、軽い船体に巨大な帆を掲げ、高速帆船として世界の海を席巻したアメリカン・クリッパーの伝統に通じるものといえた。
 軽量化の決め手は、船体以外の上部構造のほとんど全てをアルミニウム製にしたことだった。この斬新なアイデアは、船首部と船尾部以外の肋骨を省き、船体外板と縦通材によって強度を保持するという大胆な船体設計と相まって、船全体の軽量化に大きな役割を果たした。
 しかしユナイテッド・ステーツがスポットライトを浴びた時期はわずか数年で終わる。1958年にはジェット機による大西洋横断輸送が始まり、世界の旅客輸送は一気に航空機の時代に向かう。その後、クルーズ分野に進出して成功を収めた時期もあったが、定期客船としての華々しい活躍の舞台はもはや訪れることなく、1969年の第400次航海を最後に現役を退く。時代の技術を結集した世界最高速のスーパーライナーも、飛行機のスピードには勝てなかったのである。
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