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海運雑学ゼミナール

312 海賊がモデルだったロビンソン・クルーソー

 イギリスの作家デフォーの小説「ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険」(1719)は、航海の途中で遭難し、絶海の孤島で27年余りの年月を過ごした主人公の冒険物語だが、この小説には、実在のモデルがいたといわれる。
 その人物はイギリスの私掠船「シンク・ポーツ」の水先人だったアレクサンダー・セルカーク。私掠船とは、国王の特許状を得てスペイン船を襲い掠奪を行った一種の海賊船で、彼は船内での権力抗争に巻き込まれ、1703年9月に南太平洋のファン・フェルナンデス島という無人島に置き去りにされてしまう。
 彼に残されたのはわずかな私物と銃と少量の弾薬のみ。しかし島には海亀やエビや以前この島に住んでいたスペイン人が残した山羊がおり、彼らが植えた蕪も群生していた。
 セルカークはこれらを食料にし、ヤギの皮をなめして衣服にし、木を摩擦して火をおこす方法を考案するなどして5年間生き延びる。そして1709年1月、偶然立ち寄った英国の私掠船の乗組員に発見され、救出されたのだった。
 当時、セルカークのように、ある種の刑罰として孤島に置き去りにされた船乗りのことを「マルーン」と呼んだ。
 その多くは餓死したり原住民に殺されたりしたが、孤独と苦難に耐え、強靭な意志によって生還したセルカークの冒険譚は本国の英国でも話題になったのだろう。そこに作家の想像力がさらに豊かな肉付けを与えて誕生したのが、勇気と忍耐と信仰心に溢れるヒーロー「ロビンソン・クルーソー」だった。
 海賊船の乗組員だったセルカークがクルーソーのような高潔な人物だったとは考えにくいが、デフォーが創り出した魅力的なキャラクターは多くの人の感動を呼び、作品は今も児童文学の古典として世界中で読み継がれている。
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