日本船主協会

トップページ海運雑学ゼミナール

海運雑学ゼミナール

313 スエズ運河:紅海から地中海へスエズ運河を通って移住した魚

 スエズ運河は、1869年の開通以来、ヨーロッパとアジアを結ぶ最短ルートとして膨大な貨物や人を運んできた。ところがスエズ運河には人間以外にも利用者がいた。紅海の魚たちである。
 地中海は、サンゴ礁が群生する紅海よりも水温が低く、一方の紅海は地中海よりもかなり塩分が濃い。運河の中間部や途中にあるビッター・レイクスという湖の塩分濃度は、紅海よりもさらに高い。
 こうした環境の違いを乗り越えて、紅海から地中海に渡った魚が見つかったのは、運河開通のわずか33年後のことだった。現在、紅海を原産地とする魚の種類は少なくとも41種。これに軟体動物や甲殻類などを加えれば、地中海に生息する紅海原産の海洋生物の種類はさらに多い。
 外来種は在来種を押しのけて繁殖するのが普通だが、地中海では在来種の生物相にほとんど影響を与えることなく、紅海からの外来種が共存している。その理由は明らかではないが、紅海は多種多様な魚がひしめくいわば魚種の過密地帯。一方の東地中海はもともと在来の魚種が少なかった。紅海から移住した魚たちにとっては未開拓のフロンティアのようなもので、そこには新しい種を受け入れる余地が、まだ十分残っていたのではないかと考えられている。
 こうした外来種は、現在、東地中海の重要な漁業資源となっており、運河開削計画の推進者フェルディナンド・ドゥ・レセップスに敬意を表し「レセップ の移住者(レセプシアン・マイグラント)」と呼ばれている。
前のページへ海運雑学ゼミナールタイトル一覧へ次のページへ