日本船主協会
SANKO UNITY(原油タンカー/三光汽船)
原油タンカー 巨大な船体に
地球に優しい技術を満載した
タンカーの名門の新たなフラッグシップ
SANKO UNITY 主 要 目
SANKO UNITY 全 長 333.00m
全 幅 60.00m
深 さ 29.30m
満載喫水 20.85m
重量トン数 298,920D/W
総トン数 159,577G/T
主機出力/td> 25,480kw
航海速力 15.5knots

 原油は、世界の海上荷動き量全体の約30パーセントという最大のシェアを占める貨物。年間約15.5億トンが世界の海を行き交い、その6〜7割がVLCC(Very Large Crude Carrier)と呼ばれる超大型タンカーによって運ばれている。特に中東と日本など、長距離大量輸送が求められるルートではVLCCが輸送の主役となっている。
 原油タンカーの場合、20〜29万重量トン級をVLCCと呼び、それ以上をULCC(Ultra Large Crude Carrier)と呼ぶ。かつては50万重量トンを超えるULCCも出現したが、市場動向や運航採算等の面から、現在はVLCCが世界の大型タンカーの主力となっている。
「SANKO UNITY」は、2000年9月に竣工した三光汽船の最新鋭VLCC。29万8920D/W(重量トン)というVLCCとして最大級のサイズを誇り、環境対策や省エネルギーの面でも高度な最新のテクノロジーを投入した、タンカーの名門・三光汽船の新たなフラッグシップだ。
 1985年に会社更生法適用を受けた同社は、翌年1月にスタートした再建計画を血の滲む努力で断行。98年1月に更生債務を繰り上げ完済し、予想を上回るスピード再建を果たした。しかしその過程でULCC二隻、VLCC一隻の超大型タンカー船隊をすべて売却。以後はアフラマックス(7万9999D/Wタイプ)中心でやってきた。
 タンカーは同社にとってお家芸ともいうべき分野。その高度なノウハウは、世界中の荷主から高い評価を得てきた。十年余りの雌伏の後、満を持して登場させた新鋭VLCCの斬新なコンセプトには、名門復活への新たな意欲がみなぎる。

▲揚げ荷役中の
「SUNKO UNITY」
 環境対策は特に注目すべき点だろう。ダブルハル(二重船殻)化は当然のこととして、さらに未発効の国際的な大気汚染防止規則(MARPOL73/78 New Annex VI)を先取りして採用。同規則のNOx規制値をクリアした最新設計の主機関は、原油タンカーのような大型船のものとしては、ほぼ世界初となる。
 船内焼却炉には、現在陸上でも問題になっているダイオキシンの発生を抑制するため、800〜1100度の高温で焼却し、排出時に300度まで急冷するというハードな要求を満たすため、900キロワットという大容量タイプを導入している。
 またバラストタンク内に固定式のガス検知器を設置。満船航海中のバラストタンクへの原油漏れを未然に防ぐことで、バラスト水への原油混入を防止。さらに排出されるバラスト水の汚染を監視する検知器を装備するなど、バラスト排出に伴う汚染についても万全の防止対策を施している。
 船体軽量化のメリットのある高張力鋼の使用率を低減させ、腐食に強い軟鋼の使用率を70パーセントにまで高めたことも、環境対策へさらに一歩踏み込んだコンセプトというよう。
 同社では海洋生物に有害な環境ホルモンを発生させる有機錫使用の船底塗料を、政府による指導に先駆け、率先して錫フリー塗料に切り替えてきたが、同船でもこの方針はむろん踏襲されている。
 さらに省エネルギー対策として、推進抵抗の少ない船型、フィン付きラダーバルブ、高効率タイプのプロペラを装備し、プロペラの回転によって発生する水圧変動を吸収するダンプタンクを採用すことで、航行中の振動を軽減。乗組員の居住環境の改善にも目配りしている。
 特筆すべきは、荷主の石油メジャーが定めたハード・ソフト両面にわたる安全基準を満たしている点だ。乗組員の教育も含め、現行の標準よりもはるかにハイグレードな要求を満たすためにはコストもマンパワーも過分のものが必要とされる。

▲省エネ性を高める
フィン付きラダーバルブと
高効率プロペラ
 元来、同社には三国間輸送に強いという伝統的な特色がある。30万D/W級のVLCCをワールドワイドに運航するという点では、今も国内唯一の会社だ。環境・安全対策において、世界標準にキャッチアップするだけでなく、率先してリードすることは、世界単一市場での活動に意欲を燃やすタンカーの名門としてのプライドの現れともいえよう。
 巨大な船体に、環境に優しいアイデアを満載した最新鋭VLCC「SANKO UNTY」は、21世紀の海へ船出する三光汽船の新たなシンボルとして、今日も世界の海に力強い航跡を描き続ける。