日本船主協会
第二ぷりんす丸(自動車専用船/プリンス海運)
自動車専用船 時代のニーズに応え暮らしの夢を運ぶ
国内自動車輸送の海のハイウェイ
第二ぷりんす丸 主 要 目
第二ぷりんす丸 全 長 117.00m/td>
全 幅 20.00m
深 さ
(乾舷甲板)
(最上甲板)

6.15m
11.90m
満載喫水 5.90m
総トン数 4,415G/T
積載台数
(乗用車)
720台
主機出力 8,130ps
航海速力 17.5knot

 自動車の国内輸送というと、ラック状のトレーラーに何台もの乗用車を乗せた陸送車のイメージが浮かぶ。しかしこの分野でも、低コストの長距離大量輸送能力を生かした内航海運の果たす役割は大きい。
 国内自動車輸送の主役は内航の自動車専用船(PCC/Pure Car Carrier)だ。ランプウェイ(傾斜路)で結ばれた多層デッキに貨物の自動車を自走させて積み付ける、自動車の特性を利用した独特の荷役方式は外航PCCと同様で、船体構造も積載台数の違い以外には大型の外航PCCとほぼ変わりない。
 国内の新車需要が右肩上がりに推移した高度成長期には、内航PCCは各自動車メーカーの専用船として機能し、新車以外の貨物を運ぶ余力はなかった。しかしバブル崩壊後の不況で国内新車需要は低迷し、内航PCCの輸送活動にもその影響は顕著に表れた。
 一方急速な伸びを見せ始めたのが中古車市場で、国内各地で大規模なオークションが行われるようになり、それに伴なって新たな輸送需要が生まれた。こうした変化の中で中古車の輸送も大ロット化が進み、内航PCCの大量輸送能力が生かせる機会が拡大してきた。
 荷主側にも内航PCCでの大ロット輸送によるコスト低減メリットは大きく、従来内陸で行われることの多かったオークションが、最近は内航PCCが寄港可能な臨海地域に移ってきている。また輸出市場でも中古自動車需要は堅調で、輸出用外航PCCが入港する港湾へのフィーダー輸送のニーズが高い。
 新車輸送分野でも、メーカーにとって物流コスト削減は重要な課題となっており、生産拠点を内陸から臨海地に移すなど内航PCCの活用を前提とした動きも:顕著だ。日産自動車が採用した新物流システムでは、すでに新車輸送の約50%を内航PCCが担い、将来的にはこれを60%台にもっていく計画だという。「メーカーの専用船」という従来の内航PCCのイメージを変えるこれらの動きは、長距離大量輸送に適した輸送機関としての内航海運のレゾンデートルを再認識させるものといえよう。

▲大型特殊車の積み込み
 「第二ぷりんす丸」は、こうした内航PCCへの新たなニーズに応える日産プリンス海運の新鋭船。720台積み、4415総トンという船型は、300台積みクラスが主流の内航PCCとしては大型に属する。
 近年人気が高まっているRV車にも対応し、クリアハイトの高いハイルーフ用のデッキを備え、さらに大型クレーンなどの建設機械の積載も可能なように、第三デッキと右舷の搬出入口には4メートルのクリアハイトを、第三デッキと岸壁を結ぶ右舷ランプウェイには40トンの荷重強度をもたせてある。
 裸の状態で運ばれる自動車は、荷役中や輸送中にダメージを受ける危険性が高い。これへの対策も万全で、ハード面では従来スリップ防止のために凹凸をつけていた各層のデッキを完全にフラット化。固縛用のラッシングポイントは埋め込み式とし、必要な摩擦係数を得るために、空母の離着艦甲板に使用される新素材のエポクソ樹脂をデッキ全面に塗布した。
 ソフト面では独自の「品質に関する船積み卸し作業基準」に基づき、作業中はボタンやベルトの付いた衣服を着けない、腕時計を外すなど、厳密な安全管理を徹底。これは「第二ぷりんす丸」のみならず、日産プリンス海運のすべてのPCCに適用される。

▲ランプウェイからの
乗用車の積み荷役
 操船面では、サイドスラスター1基とベクツインシステムを装備することで、離接岸時にタグ不用の軽快な操船を可能にした。ベクツインシステムとは、2枚のシリングラダー(通常より大きな舵角の取れる特殊な舵)をジョイスティックで制御することにより、推力を全方向に振り向けられる画期的な操船システムで、固定ピッチプロペラを前進方向に一定回転させたままで、前後進、左右旋回、ホバリング(停止)、後進しながらの旋回など、自在な操船が可能になる。
 さらに17.5ノットの航海速力を確保し、正確な定曜日サービスも可能にした。現在「第二ぷりんす丸」は僚船の「第十一ぷりんす丸」とともに追浜・神戸・苅田を結ぶ航路に就航し、週3便の定曜日サービスを実現。メーカーの物流効率化に貢献するとともに、一般荷主からも利便性向上への高い評価を受けている。
 自動車は今や国民生活に欠かせない暮らしの足となった。その物流効率化を通じて、高品質の車をより安く消費者のもとに届ける内航PCC。「第二ぷりんす丸」は、今日も国内自動車輸送の海のハイウェイとして、国民の暮らしの夢を運び続ける。

▲ベクツインラダー

▲ベクツインラダーシステム
による主な操船動作