1・5 わが国外航商船の第二船籍制度の検討

 

151 構造改革特区への対応

当協会は、わが国における第二船籍制度の創設を検討するため、20036月に構造改革委員会の下に「船籍問題小委員会」を設置し、会員船社の望む第二船籍制度やそのメリットなどを検討するとともに、200311月には当協会単独で、また20046月には愛媛県今治市と共同で「わが国外航商船の第二船籍制度の創設」を内閣官房構造改革特区推進室に提案した。(船協海運年報200416わが国外航商船の第二船籍制度の創設に向けた対応」参照。)

 邦船社にとって魅力ある第二船籍制度は、パナマ籍などの外国置籍と同等、もしくはそれ以上の競争力をもった制度である。そのためには、税制、配乗要件、船舶の設備・検査に関する規制について、国際標準並みとすることとなどが必要となる。一方、政府の特区構想では、税財源措置の優遇を求める提案は検討対象とはしないこととされているが、200311月の特区提案では、当協会の求める第二船籍制度の全体像を提示するため、あえて税制要望を含む特区提案を行った。また、20046月の特区提案では、税制要望を外し、外航日本籍船に係る日本人船機長配乗要件の撤廃と船舶設備・検査要件等の緩和を求めたが、いずれも、第二船籍制度の創設については「特区での対応不可」との回答であった。

その後、国土交通省より、外航日本籍船に係る設備・検査に係る規制について個別具体的な事例があれば改善に向けて前向きに対応するとの回答があったため、200411月の第6次構造改革特区においては、日本人船・機長配乗要件の撤廃に焦点をあてた「わが国外航商船の第二船籍制度の創設」を今治市と共同で提案したが、国土交通省は特区対応不可とする立場を変更することはなかった。第6次構造改革特区提案における内閣官房構造改革特区推進室への当協会からの提案および国土交通省回答の詳細は、資料1-5-1の通りである。

6次構造改革特区における外航日本籍船の日本人船員配乗要件の撤廃は実現しなかったが、当協会は、魅力ある日本籍船の確立に向けて、全日本海員組合との協議の場を通じ配乗要件撤廃の可能性を模索していくこととした。(資料1-5-2「船員・船籍問題労使協議会」参照)

 

152 船員・船籍問題労使協議会

当協会と全日本海員組合(以下「全日海」)は、20053月、労使間で日本籍船の配乗要件の撤廃および日本人船員(海技者)(以下「日本人海技者」)の確保・育成策(以下「確保・育成策」)等を協議するため、「船員・船籍問題労使協議会」(以下「協議会」。資料1-5-2)を設置した。その後、4月の第2回協議会、および協議会の下に設置された作業委員会での検討を経て、6月の第3回協議会において、新規に登録される日本籍船について現行の国際船舶に適用される船・機長配乗要件の撤廃を国土交通省に申し入れること、また、日本人海技者の確保・育成について20066月末を目処に他の海事産業関連団体とも共同し実効ある制度づくりに取り組んでいくこと、等を確認した。(資料1-5-3

7月の第4回協議会(資料1-5-4)では、労使間の確認事項に関連し、新規に登録される外航日本籍船の配乗要件の撤廃について国土交通省に申し入れを行うこととし、確保・育成策については、本協議会の下に設置される作業委員会において、まず、協議を進めるに際しての枠組みを検討し、また、その他の政策課題(船員特別税制、海に関する理念法(基本法)、トン数標準税制)についても作業委員会で具体的な検討に着手することを確認した。第4回協議会での合意を受けて、当協会と全日海は、新規に登録される日本籍船の配乗要件の撤廃について、資料1-5-5のとおり国土交通省に申し入れを行った。

10月の第5回協議会では、確保・育成策の検討の枠組みについての作業委員会の報告を受け、まずは船協と組合で確保・育成策を早急に協議し、協議の過程で海事産業関連団体および行政当局へのアプローチが必要となる場合には改めて検討を行うことを確認した。また、当面は確保・育成策の作業委員会の協議を先行し、上述の確認事項にある「その他の政策課題」(船員特別税制、海に関する理念法(基本法)、トン数標準税制)については、関係資料の収集等、共通認識を図る作業を行うこととした。

 

153 船・機長配乗要件の見直し等に関する検討会

国土交通省は、20057月の船・機長配乗要件「通達」の見直し等に関する当協会と全日本海員組合(以下「全日海」)の申し入れ(資料1-5-2「船員・船籍問題労使協議会」参照)を受け、官労使と学識経験者をメンバーとする「船・機長配乗要件の見直し等に関する検討会」(座長:野川忍 東京学芸大学教授。以下、「検討会」)を設置して見直しに係る課題等を検討することとし、同年9月に第1回会合を開催した。(資料1-5-6)第1回検討会では、検討会の趣旨や検討すべき課題等について議論が行われ、検討会において、@配乗要件の見直しの背景と必要性、A配乗要件を撤廃した場合の法的問題点、B配乗要件の撤廃が現行の他の法令・施策に及ぼす影響、等の課題について検討を進めることが確認された。

200511月の第2回検討会では、国土交通省より、日本籍船の船長が日本人でない場合や、日本人が一人も乗船していない場合の法令上の問題の有無などについての関係省庁への照会結果の説明があった。照会結果については、直接法令に抵触すると指摘した省庁は今のところ存在しないが、配乗要件を撤廃する政策的な理由が不明確であるとの指摘や運用上の懸念を示す省庁もあったため、2006年明けに開催する第3回検討会で各省庁の懸念事項についての見解を労使から書面で提出することとなった。また、同省は、配乗要件に関する外国の実態調査を行うこととし、2006年明けに開催される第3回検討会で調査結果が披露されることとなった。